ブログ

オーストラリアの相続手続きについて

オーストラリアで弁護士をしていますと、日本人の方でオーストラリアに資産を残している方が亡くなった場合の取扱いについて質問を受けることがよくあります。 インターネット上では限られた情報しか記載されておらず、また、依頼を掛けるにも実務面で良く解らないといった声をよく聞きます。  そこで、オーストラリアの遺言状と相続手続きについて、日本人の方にありがちな注意点を含めて簡単に纏めてみたいと思います。

オーストラリアに資産をお持ちの場合

オーストラリアでは有事の際に備えて遺言書を作成しておく方は割と多いものですが、日本人の方の感覚では(大病にでも掛からない限りは)遺言書を作成しておくことは余り一般的な事とはいえないかもしれません。  しかし、相続という問題は誰でもいつかは必ず経験することですから、遺言を早めに用意しておけば、必ず来る相続を積極的にコントロールできますし、また備えがあるので日々の生活を安心して送ることができます。  実務的な話では、故人の銀行口座は死亡時に凍結されてしまうものですし、不動産や株式の名義変更などを分配する手続きでは遺言書の存在が重要になってきます。  ですから、『何かあった時に無いと家族が困る』のが遺言書なのです。

日本に居住されている方は見落とされている場合が多いものですが、オーストラリアに資産をお持ちの方が亡くなられた場合にはオーストラリア国内の法律に従った遺言相続手続きが必要になります。  例えば、亡くなられた方の不動産名義を変更したり、故人の定期預金を解約したり、銀行口座を閉設する場合、銀行側は親族という事実関係だけで手続きを認めておらず、オーストラリアの法律で認定されているExecutor(遺言執行人=通常は遺言状にて指定)に一連の手続きを行うよう求められます。

オーストラリアのクィーンズランド州では国外の裁判所による遺言相続における認定をBritish Probates Act 1898という法律に基づいて認知しています。  従って、遺言相続に関するオーストラリア国外の裁判所による認定が行われている場合、その判決を “Reseal”(オーストラリアの裁判所による検認手続きを受けず、海外で発行された判決をオーストラリアの裁判所に認定する簡易手続き)する事で効力を持ちます。  しかしながら、日本は前述のBritish Probate Act 1898を批准していません。  言い方を変えますと、日本とオーストラリア間には遺言相続における国際協定が結ばれていない事から日本における遺言執行に関する判決はオーストラリア国内で効力を持たないという事です。  すなわち、日本の家庭裁判所による検認手続きを経て判決がでていたとしても、オーストラリアでは効力を持たないという事です。   この場合、日本の遺言状はオーストラリアの裁判所による検認を経たとしても、無効な自筆証書遺言となることがあります。   また、オーストラリアには、法定相続人に対して相続財産の一定割合を必ず相続できる権利を与える遺留分減殺請求権という制度は存在しませんので、日本の法律とオーストラリアの法律の両方が問題となることが多くあります。

従って、オーストラリア国内に不動産や銀行口座をお持ちの方は日本で作成される遺言状とは別に必ずオーストラリアで有効な遺言状を作成されておいた方がいいでしょう。  なお、英文を理解されない方がオーストラリアの遺言状を作成される場合、法的に有効と認められるには有資格者に拠る通訳・翻訳が必要となる場合がありますので注意が必要です。

オーストラリアの遺言状

オーストラリアには日本のような自筆遺言状という概念はなく、弁護士に依頼される形が一般的です。  極まれに市販されているDIY(セルフキットの雛形)を購入してご自身で作成される方もいますが、これはあまりお勧めできません。  オーストラリアの相続手続では、故人が残した書面が“遺言書”と認められるにあたって厳格な書式とルールが適用されますので、1つでも要件を満たしていないと、その効力が無効になってしまう場合がありますので注意が必要です。  また、仮に書式と形式を満たしている書類を作成していたとしても、執行時の立会人が有効と認められなかったり、立会人の人数が足りなかっただけで遺言書としては認められない場合がありますので、オーストラリアの政府組織であるPublic Trusteeでは遺言状の作成は弁護士を通して作成するように呼びかけています。  

遺言状を作成する時の注意点

日本人の方で多いケースとして、「オーストラリアで遺言状を作ったけど、自分の意思がキチンと反映されているか解らない」 「遺言状にはXXXと書いてあると聞いたけど、何か有った時にそれを証明する手立てが無い」 というクライアントにお会いする事があります。  オーストラリア国外で生活されている日本人の方が遺言状を作成される場合にはAnnexure(付帯書類)の作成をお勧めします。  

なお、このAnnexureでは以下の書類を作成するのがいいでしょう。

  1. 遺言状の翻訳文(日本語)
  2. 遺言状に記述されている内容を日本語で説明した通訳者による宣誓供述書 

これらの書類があれば、遺言状に何が書いてあるのか安心してサインできますし、あなたが亡くなられた後、残されたご家族も遺言状の内容を問題なく理解できます。

私が運営しております法律事務所では、具体的な遺言書作成のご希望をお持ちの方はもちろん、ご自身に遺言書作成が必要か分からないという方もお話を十分伺った上で丁寧にご案内させていただいております。  なお、当事務所へのご来所が難しい場合、弁護士が病院、ご自宅などへ出張のうえご相談をお受けすることも可能ですので、先ずはお気軽にご相談ください。

オーストラリアの相続手続き

検認手続きの流れ

オーストラリアの相続手続は大きく分けて、Grant of Probate(遺言書の存在している場合)とLetter of Administration(相続書が存在していない場合)のいずれかの検認手続きを経て行われる形となります。 Grant of Probateでは遺言書で故人が指定したExecutor(遺言執行人)が遺言状に基づいて遺産を分配し、Letters of Administrationでは最近親の方がAdministrator(遺産管財人)として遺産分配を法律に従って行います。 

これらの検認手続きでは遺産が所在している地域の司法管轄権を有する高等裁判所に申請を行います。  そして、裁判所に拠って相続手続きにおける阻害事項がないこと、申立人が相続手続きを行う権限を有している旨の承認(Seal)が行われます。 クィーンズランド州高等裁判所に前述の申し立てを行う場合はUniform Civil Procedure Rules 1999 (民事訴訟法)が定める前提条件をクリアしている必要があります。  具体的には、1. 被相続人が亡くなられたことの告知、2.遺言状の存在、または、Intestate(故人が遺言状を残していなかった旨)の告知、3.申し立て人が検認手続きを裁判所に申し立てる旨の告知、そして、4. 申し立て人の選出について異議申し立てを受け付ける旨の告知、これらの内容を含む告知を州内全域に流通する新聞、並びに官報紙に掲載した上でPublic Trustee (公認受託者)に該当の記事を送付し、そこから最低14日間が経過した時点でクィーンズランド州高等裁判所に検認手続きの申し立てを行う形となります。  簡単にいえば、検認手続きをされた申請者の方が故人の方の相続手続きを行う権限を有していることを裁判所がお墨付きを与えるプロセスとなります。 裁判所が発行する証書(以下、サンプル画像参照)を元に不動産名義を変更したり、銀行口座の閉設や払い戻し、株式の名義変更などが行える形となります。 

遺産管財人の選任

通常、全ての申請書類が整うまでに3週間から6週間程度、裁判所に申請して承認されて証書が発行されるまでに4週間から7週間程度掛かりますから、最短で進んだと仮定しても検認手続きには2~3カ月程度の時間がかかります。  ただし、これはオーストラリアに住むオーストラリア人が亡くなった場合の話ですので、日本人の方が日本で亡くなられている場合でしたり、申立人の方が日本在住の場合などは必要とされる書類も異なります。  また、英語以外の書類はオーストラリア政府認定の公認翻訳を付けて提出しなければならず、進めてみないと見通しがつかない場合もあり、予想通りに話が進まない場合が多いものですから最低でも6~9か月程度の期間を見ていただく方が宜しいでしょう。  

なお、通常の相続手続きで必要となる実費で主なものは以下の通りです。
–     弁護士費用
–     Supreme Court Filing fee (高等裁判所費用)  
–     Courier Mailへの掲載費 
–     Queensland Law Reporter・官報紙への掲載費               
–     オーストラリア政府認定の公認翻訳               

何か不明な点や解らない事がありましたら、お気軽にご相談いただければと思います。

PAGE TOP