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オーストラリアの弁護士の給料について

1ヶ月に1、2件の割合ですが、オーストラリアの弁護士の所得水準について検索して本ブログを訪れられる方がいます。  オーストラリアの法曹界に興味を持たれた方がキャリア形成や進路選択にあたって調べられているのかもしれませんが、残念ながらインターネット上には該当する情報が無いようです。  そこで、私の経験則となりますが、オーストラリアの弁護士の給料の相場と傾向について、私の解る範囲で説明したいと思います。  

まず、世間では高所得を得ていると思われている職種の弁護士ですが、継続的に年間100万ドル(約9000万円)以上を稼いでいる弁護士が居る一方で、新人や若手を中心に仕事がなく、弁護士として生計を立てられないといった話も聞きますので、年収については、それぞれの弁護士により大きく異なるというのが実情です。  一言でオーストラリアの弁護士の給料についていえば、セレブな弁護士は一握り、お金に困らない程度の生活をされている方が大多数だと思います。  

オーストラリアの弁護士って儲かるの?

公的機関に拠って統計が公表されているわけではないので正確な数値とはいえないかもしれませんが、年間に15万ドル以上の収入を得ている弁護士は全体の10~15%程度、10万ドル以上の収入を得ている弁護士は全体の35~45%ぐらいなのではないでしょうか。  訴訟に限らず、企業買収等で巨額の金額が動く案件に関わる弁護士の報酬は比例して大きくなるのは当然ですし、大手法律事務所のパートナー(経営者)であれば、自身で稼いだ弁護士報酬よりも法律事務所の利益分配が大きな収入を占める場合が多いものです。  とはいえ、実際に多額の収入を得ている弁護士は数の上では大手法律事務所を中心に極わずかであり、大多数の弁護士はそれなりに頭をなやませつつ、お金に困らない程度の生活をしているのが実態だと思います。  特に若手のうちはお給料を貰いながら弁護士としての勉強をさせて貰っているという位置づけになりますので、あまり収入は期待できないでしょう。 むしろ2004年にロースクールを卒業した自分の同期を見渡してみますと、投資銀行や天然資源、大企業に就職した友人達は初年度から10万ドル近くの収入を得ていますので彼らの方が遥かに稼いでいます。 

弁護士業界の特徴:給与に開きがある理由

弁護士業界の特色として、経験年数の少ない新人弁護士よりもベテラン、その分野に明るくない弁護士よりも経験豊かな弁護士に依頼が偏ってしまう傾向があります。  これは依頼者に弁護士との付き合いが無い場合が多く、また、医療系の国家資格等のように弁護士費用は保険が効くものではありませんから、どうしても依頼者は慎重に弁護士を選ぶ傾向にあることに起因しています。  オーストラリアの弁護士業界の特色として、高収入を得ているのはキャリアの長い方達が中心となるわけですが、彼らは長年の弁護士としてのキャリアに基づく知識と経験に加えて、人脈と既得権益の基盤を持っている場合が一般的です。  従って、彼らは転職をすることもありませんし、なかなかリタイアもしないものですから、新人や若手にしてみれば、上が詰まっている状態とでもいうのでしょうか。 ベテランと新人の間には大きな実力の差が顕在していること、そして、若手は他業種への転職も多いのがオーストラリアの弁護士業界の特徴といえると思います。    

弁護士のキャリアと収入の目安

ロースクールと司法修習期間を終え、弁護士に任官してから弁護士数20名程度の中規模法律事務所で5年ほど弁護士としてのキャリアを順調に積みますと、自分の判断で依頼を回す事ができるようになりますので、この時点までくれば年間7.5~10万ドルという給料が一般的な水準になると思います。  20代後半でこの水準の年収があれば、金銭面で十分に豊かな暮らしができますので、決して悪くない数字だと思います。  ただ、世間で思われているイメージとは異なり、資格職という事で胡坐をかくことは出来ませんから、日々、研鑽を積んでいく必要がありますし、それなりにストレスの多い仕事です。  実務的には若手弁護士が10時間かかっても出来ない仕事をベテラン弁護士なら数時間でやってのけたりすることも普通にある業界ですから、新人の頃は週に80時間働いてもベテラン弁護士の足元にも及ばないのが普通です。  ちなみに、オーストラリア政府が定めるNational Employment Standards(日本でいう労働基準法に相当)では1週間に働くことのできる最高就業時間が38時間と定められていますが、キャリアの長い弁護士ほど短期集中型労働を良しとする傾向にあり、自分の周りにいる優秀な弁護士の中では1日の平均勤務時間は7時間・実働だと5時間未満というような方も少なくありません。  詰まるところ、弁護士の仕事の質は単純労働ではありませんので、時間よりも生産効率が全てといえます。  また、”週60時間働いて年収20万ドル” と ”週35時間働いて年収15万ドル” のどちらかを選べるのであれば、オーストラリアでは後者のライフスタイルを選ぶ弁護士が多いのではないでしょうか。  

転職については前述した通りで、弁護士任官から長期間に亘って同じ法律事務所に残る方は決して多くありません。  転職の理由は収入や待遇面を含めたキャリア・アップの為であったり、違う分野へのチャレンジであったり、独立や引っ越しなど理由は様々ですが、事務所との契約が更新されないといったケースも少なからずあります。 そこが医師やパイロットなどの職種と大きく異なるところだと思います。  

弁護士が高収入を得るために

弁護士が高額の給料を受け取るにあたり、売上は切っても切り離せない条件です。 弁護士が高収入を得るための前提として、それだけの売り上げが必要となりますが、キャリアの無い弁護士にとっては事務所からの全面的なサポートがないことには難しいでしょう。  年間15万ドル以上の給与を得ている弁護士の多くは10年以上のキャリア(知識・経験・ノウハウ・人脈・ネットワーク)形成に成功しているのが普通ですから、弁護士として厳しい競争を勝ち抜けるかが給料の明暗を大きく分けるといえます。 

弁護士の報酬は高額と思われがちですが、これは案件に拠るとしかいえず、業務に拠っては薄利多売で事務スタッフを数人単位で上手く使って数をこなす必要のある業務も多く存在しますし、法人と個人の案件では報酬の幅に大きな差があります。  どの業界でも同じだとは思いますが、上手く顧客ベースを開拓する事ができれば、割の良い仕事を選ぶことも十分に可能ですが、弁護士は仕事が保障されているわけではなく、非常にドラスティックな業界であると思います。 その一方、弁護士の仕事に在庫や大きな設備投資は必要なく、知識と経験が売り物ですから常に成長を感じることができ、また、変なしがらみや理不尽な事は殆どありませんので、自分の身一つで生計を立てられたい方には居心地の良い業界だと思います。

最後になりますが、弁護士の仕事といいますのは、自分の信念を曲げる必要がなく、自分が正しいと思う事をすることで社会の役に立ち、クライアントにも感謝され、常に新しい知識や経験を吸収できる環境に居ながら、それでいて、自身の生計を立てる事ができます。  キャリアの浅い頃は知識も経験もないので大変ですが、長年に亘って正しいことを積み重ねていくうちに知識と経験だけでなく、経済的な利益もついてくるものです。  私は弁護士の仕事が天職だと思っていますが、お金儲けなら弁護士よりも効率の良い仕事は他に沢山あるように思います。 

 

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