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オーストラリアの遺産相続・遺言書作成

オーストラリアの遺産相続・遺言書事情

オーストラリアでは、家の購入、結婚や出産といった人生の節目の際に遺言書を作成しておく方は割と多いものですが、日本人の方の感覚では、大病にでも掛からない限り、遺言書を作成しておくことは余り一般的なこととはいえないかもしれません。  しかしながら、相続という問題は誰でもいつかは必ず経験することですから、遺言書を早めに用意しておけば、必ず来る相続に備えて自分の財産を積極的にコントロールできますし、また自分の死後大切な家族が自分の財産をめぐって争うことを心配する必要もなくなるので、日々の生活を安心して送ることができます。 

もし、あなたが財産を残して亡くなった場合、オーストラリアではオーストラリア国内の法律に従った相続手続が必要になり、相続手続を行うにあたっては原則として遺言書で指定された遺言執行者(遺言の内容を実現するために必要な手続をする人)が必要になります。 例えば、亡くなられた方の不動産名義を変更したり、定期預金を解約したり、銀行口座を閉設する場合には、親族という事実関係があるだけでは手続を親族が代行することは認められておらず、遺言で指定されている遺言執行者に一連の手続を行うよう求められるのが一般的です。 ですから、『何かあった時に無いと家族が困る』のが遺言書なのです。  

自分が死んだ後のことを考えるのは面倒かもしれませんが、何も準備しないと残された遺族に負担がかかりますし、不測の事態が起きないとも限りません。  そのような事態が起きないよう事前に準備しておき、ご自身で財産は確実に守るようにしておく、それが財産を持っている人の努めといえるのではないでしょうか。  

オーストラリアの遺言書作成方法

弁護士に依頼するべきなのか?

日本では自筆証書遺言といって、自分で遺言を作成することも可能ですし、公証役場に行って公正証書遺言を作成することも可能です。 しかしながら、オーストラリアでは日本のように”自筆証書遺言” や ”公正証書遺言” といった概念がありませんので、遺言書の作成は弁護士に依頼するのが一般的です。  極まれに市販のDIY(セルフキットの雛形)を購入してご自身で作成される方もいますが、これはあまりお勧めできません。  というのは、オーストラリアの相続手続では、故人が残した書面が“遺言書”と認められるにあたっては厳格な書式と形式を求めるルールが適用されますので、1つでも要件を満たしていないと、その効力が無効になってしまう場合があり注意が必要だからです。  また、仮に書式と形式を満たしている書類を作成していたとしても、遺言書の署名時の立会人が有効と認められなかったり、立会人の人数が足りなかっただけで遺言書としては認められない場合がありますので、オーストラリアの政府組織であるPublic Trusteeは、遺言書は弁護士を通して作成するように呼びかけています。

どんな遺言書を作成すればいいの?

オーストラリアに生活拠点がない方でシンプルな遺言書を希望される場合は定型の遺言書をお勧めしています。  例えば、「オーストラリアにある財産は妻(夫)に相続させたい」 「子供達に均等に分配して欲しい」など、簡単な相続の取決めだけでしたら定型の遺言書で十分です。 もちろん、家族構成が複雑だったり、相続を細かく分配されたい方、何か特殊なご事情がお有りのようでしたら、定型のシンプルなものではなくなりますが、それぞれの目的に最適な遺言書の作成方法を検討して遺言書作成を進められるのがいいでしょう。 

オーストラリアで遺言書を作成する際の注意点

内容を理解した上で署名する

ごく稀に「オーストラリアで遺言書を作ったけど、自分の意思がちゃんと反映されているか解らない」 という方にお会いすることがありますが、内容を理解しないまま署名した遺言書は無効となる場合があります。 当然ながら遺言は遺言者の意思に基づいて作成されなければなりませんので、遺言書を作成される場合は、内容について説明を受け、その内容が適切に遺言書に記載されていることを確認した上で署名してください。   

日本語の翻訳文を添付する

前述のケースと類似する話ですが、 「遺言書にはXXXと書いてあると聞いたけど、英語がよく分からないので本当にその内容が書かれているか分からない」 という日本人の方にお会いすることもあります。  英文で書かれた遺言書の内容を理解することができない日本人の方が遺言書を作成される場合は、残されたご家族のためにも、日本語訳の作成も併せて行われるようにしてください。  遺言書の日本語訳についてはケースバイケースですが、少なくともAnnexureと呼ばれる付帯書類を作成しておくのがいいでしょう。  なお、このAnnexureでは以下の内容に沿った文面を作成しておかれるのがお勧めです。  

  1. 遺言書の翻訳文(日本語)
  2. 遺言書に記載されている内容を日本語で説明が行われた旨を確認する通訳者による宣誓供述書 

これらの書類があれば、遺言書に何が書いてあるのか理解した上で安心してサインできますし、あなたが亡くなられた後、残された日本人のご家族も遺言書の内容を問題なく理解できます。  また、「内容を理解出来ていない状態で署名したので、その遺言書は無効だ」といった ”遺言書がある状態なのに最悪” ともいえる遺族間の紛争を防ぐことにも繋がります。  

その他にも、幾つかお勧めしたい内容はありますが、個々のケースは弁護士に相談されてみるのが良いでしょう。  当オフィスでは、定型の遺言書はもちろん、クライアントそれぞれのご事情に応じた遺言書を作成いたしますので、まずは、日本語でご相談いただければと思います。

当オフィスの遺言書作成費用について

 
GSTは10%消費税

お問い合わせはこちら、もしくはinfo@kklaw.com.auからお願いいたします。 (初回相談無料)

 

次の記事では、゛オーストラリアの遺言書を執行する際に良くあるQ&A゛を解説します。

 

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オーストラリア最大の邦字紙・日豪プレス(2020年3月号)の頼れる弁護士特集において、当オフィスの特集記事「遺言・相続は日豪双方の弁護士サポートで安心」が掲載されました。
当オフィスは日本とオーストラリアの弁護士資格を持った弁護士が常駐しているオーストラリアで唯一の法律事務所として、提携事務所に別途依頼することなく、遺言・相続問題に対応しております。 

お手にとる機会がございましたら、ぜひご覧いただけましたら幸いです。 (記事はこちらをクリック)  (2020年3月20日追記)
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