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はじめに
車に乗る時にシートベルトを着用する義務があることは、今では常識とも言えますが、実は7歳未満の子供を車に乗せる時にはチャイルドシート*の使用が義務付けられていることはご存知でしょうか? オーストラリアでは各州ごとに子供を車に乗車させる際にチャイルドシートの使用を義務付ける法律が制定されていますので、この義務を怠れば処罰の対象となり、知らなかったではすまされないので注意が必要です。
では、いつからいつまで、どのようなチャイルドシートを着用させる必要があるのでしょうか? 今回はチャイルドシートの着用義務や種類、子供の成長に併せてチャイルドシートを切り替えるタイミングについて解説します。
(*チャイルドシートは、シートベルトを正しく着用することができない子供を万が一の事態から安全を確保するため、体型差を補うことを目的として座席に固定するものです。 オーストラリアではチャイルドシートのことを”Baby Car Seat” か ”Child Car Seat” と呼ぶことが多いようです。)
はじめにチャイルドシートの安全基準
オーストラリアには、AS/NZS 1754(Australian and New Zealand Standard AS/NZS 1754 Child restraint systems for use in motor vehicles)というチャイルドシートの安全基準があり、現在、オーストラリアで販売・使用が許されているチャイルドシートはAS/NZS 1754:2013の安全基準を満たしている必要があります。 オーストラリア国外から持ち込んだチャイルドシートでAS/NZS 1754:2013の審査を受けていない場合は使用することができませんので注意が必要です。
チャイルドシートの種類
オーストラリア国内でも場所や時代によって名称や使用方法が異なるかもしれませんので、参考程度にしていただければと思いますが、チャイルドシートは大きく分けて以下の3つに分類されます。
- ベビーシート
- チャイルドシート
- ジュニアシート
今までにチャイルドシートを購入されたことのない方は1つで事足りると想像してしまいそうですが、実際には生後0~12か月用、生後0~4歳用、生後6か月~8歳用、4歳~8歳用と子供の成長に合わせて色々な製品があり、一般的には子供が生まれてから大人用のシートベルトを装着できるようになるまでに2つ以上のチャイルドシートを購入する必要があります。 よく解らない状態でお店で説明を受けても理解するのは容易ではありませんので、事前に色々と下調べをしてからお店に行かれるのがいいでしょう。
Source: Baby Bunting Burleigh Waters
6か月までの新生児・乳児**
子供が生まれたばかりの時期は首がすわっておらず、特に注意が必要ですので、Infant capsule やconvertible car seatなど赤ちゃんを寝かせた状態で車に乗せることができるベビーシートを車の進行方向に対して後ろ向きに設置することが義務付けられています。
6か月~4歳までの幼児**
一般的にチャイルドシートと聞いてほとんどの方が思い浮かべるのが幼児用のチャイルドシートでしょう。 これらは前向きで使用するタイプと前向きでも後ろ向きでも使用できるタイプがありますが、より安全性の高い後ろ向きに使用できるタイプをサイズが許す限り使用を続けるのが好ましいとされています。
**オーストラリアの法律ではチャイルドシートを後部座席に設置することが法律で定められており、やむを得ない理由がある場合を除き、4歳になるまでチャイルドシートは後部座席に設置することが義務付けられています。
4歳~7歳までの児童
この年齢層になってくると、対象となる子供の体格に大きな差が出てくるため、年齢に合わせてヘッドレストや背もたれを取り外せるものや、最初からヘッドレストや背もたれのないものなど、さまざまなタイプがあります。 これは一般的にジュニアシートと呼ばれています。 ジュニアシートの特徴は車のシートベルトを使用できるという点で、ジュニアシートに座らせることで子どもの座高をアップさせ、大人と同じようにシートベルトが使える状態にします。 もし、子供がチャイルドシートの適正体格より大きくなってしまった場合にはチャイルドシートの使用義務は免除とされます。 なお、やむを得ない理由がある場合を除き、児童を前部座席に乗せることは禁じられています。
7歳~
子供が7歳になった時点でチャイルドシートの着用義務がなくなりますので、任意で着用するかどうかの判断をしても問題ありません。 しかしながら、骨格がまだ完成していない子供は、エアバッグによってけがをしたり、場合によっては窒息したりする可能性もあります。 車に搭載されているシートベルトは身長140cm以上の体型に対して有効に機能するよう設計されているため、7歳になっても身長が140~145cmに満たない場合、安全性を最重要視するなら子供がその身長に近づくまでブースターシート(背もたれのないジュニアシート)などでチャイルドシートの着用を続けていくのが好ましいとされています。
ジュニアシートに切り替えるタイミング
チャイルドシートからジュニアシートに切り替えるタイミングは、まずこれまで使っていたチャイルドシートの対象年齢や使用できる体重をチェックしてから決めるのがいいでしょう。 同じチャイルドシートでもメーカーや製品によって、対象年齢や使用できる体重が異なるからです。
子供の年齢や体重がこれらの基準を超えたら、そろそろジュニアシートへ切り替えるタイミングだと判断できますが、体の成長は子供によってさまざまであり、基準の年齢と体重が自分の子供に当てはまらないことがあります。 その場合には、年齢よりも体重や身長で判断するのが賢い選択かもしれません。 また、子供がチャイルドシートの使用を嫌がり始めた場合も、ジュニアシートへの切り替えを検討するタイミングです。
チャイルドシートのサイズが子供に合っていなければ、せっかくチャイルドシートを着用させても安全性を保てない可能性があります。また、子供が着用を嫌がっては元も子もありませんので、子供の座り心地にも気を配ってジュニアシートへ切り替えるタイミングを図りましょう。
チャイルドシートをいつまで着用させればよいのか迷ったら、身長が140~145cmに達したかどうかを判断基準にしてみてください。 ジュニアシートへの切り替え後は、シートベルトの締め付けを嫌がる子供もいるかもしれません。シートベルトの締め付けを和らげるカー用品もありますので、併せて使用してみるのもおすすめです。
違反した場合は誰にどんな罰則があるのですか?
チャイルドシートの着用義務に違反した場合、QLD 州では400ドルの罰金及び3デメリットポイント、NSW 州では344ドルの罰金及び3ポイントの減点となります。 この法律は運転者が対象となっており、もし子供がチャイルドシートを着用していなければ、罰金や減点の罰則は運転者に対して与えられます。 例えば、以下のような場合でも、チャイルドシートの着用を義務づけられるのは、あくまでも運転者です。
- 友人や家族の子供(7歳未満)を自分の車に乗せた場合
- 自分の子供(7歳未満)を友人や家族の車に乗せた場合
これは知らなかったではすまされないので、友人や家族の車に7歳未満の子供を乗せるときや、自分の車に友人の子供を乗せるときも、忘れずにチャイルドシートを着用させましょう。
Taxiとバスに乗る場合
NSW州以外の州では、適切なチャイルドシートがない場合に限り、タクシー乗車時におけるチャイルドシートの使用義務はありません。 ただし、子供が1才未満の場合は後部座席で大人の膝の上に(シートベルトは共有せずに)座らせる必要があります。 1歳以上7歳未満の子供については、やむを得ない理由がある場合を除き、後部座席に座らせた上で(可能な限り安全を確保できる形で)シートベルトを着用しなければなりません。
NSW州ではタクシーであっても2歳未満の子供を乗せる際には適切なチャイルドシートに乗せなければなりませんので、ご自身で持ち込む必要があります。 タクシー会社の中にはチャイルドシートの準備をしていることがありますので、可能であれば、前もって確認して予約しておくのが賢い選択です。
子供をバスに乗せる場合、ほとんどの公共バスにはシートベルトがついておらず、チャイルドシートを設置することができませんので、法律上はチャイルドシートの使用義務はありません。 なお、法律上バスの定義は12席以上ある車輛となりますので、車輛が12席未満のミニバスやバンには通常通りチャイルドシートの利用が必要となります。
Uberに代表されるRideshare Serviceを利用する場合にはタクシーとは異なるルールが適用され、WA州とQLD州以外では、子供を乗せる際にはチャイルドシードに乗せなければなりませんので、ご自身で持ち込む必要があります。
緊急時にはどうしたらいいですか?
子供の体型にあったチャイルドシートを利用するというのが最も望ましいことは言うまでもありませんが、やむをえない理由でタクシーに乗らなければならないという状況も考えられます。 ですから、法律は子供の安全が守られるよう、可能な限り子供の体型にあったチャイルドシートの利用を義務付けていますが、緊急時や子供が怪我をしていてチャイルドシートを利用できない場合などを含め、やむを得ない理由がある場合には、使用義務は免除されます。
その他にチャイルドシートの使用義務が免除される可能性が考えられるシチュエーションには以下のようなものがあります。
- 座席の構造上の問題でチャイルドシートが設置できない状況
- 乗車人数が多くてチャイルドシートを設置できる場所がない状況
- 子供が怪我をしていてチャイルドシートの装着で悪影響が生じる状況
- 肥満や身体的問題の影響でチャイルドシートの装着が難しい状況
- おむつやミルクなどの日常生活の世話をするタイミング
- バスやタクシーを利用する状況
- 公共の福祉を守るためにやむを得ない状況
- 救急で子供をすぐに病院へ搬送する必要がある状況
ただ、チャイルドシートを使用しなくてよい状況には客観的な合理性と必然性が認められる必要があり、個人の考えが必ずしも認められるとは限りませんので、出来る限りチャイルドシートを使用するのが好ましいといえます。
チャイルドシートの正しい使用方法
チャイルドシートはメーカーが指定している方法で設置した上で正しく使用しなければ、十分な効果を得ることができませんので、必ず取扱説明書などに従って正しく使用するようにしましょう。 一昔前のオーストラリア政府による調査では約7割の方がチャイルドシートを正しく設置できていないとの結果もありますので、ご自身でチャイルドシートを適切に設置する自信のない方は、お店やchild safety seat inspection station などで専門の訓練を受けた有資格者に確認してもらうか設置してもらうのが安心です。
いずれの場合も、子供の安全を最優先するために、チャイルドシートの着用義務は必ず守りましょう。