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弁護士が教える オーストラリアで会社を設立する方法 

今回はオーストラリアで会社を設立する際によく聞かれる質問について解説していきたいと思います。

目次

会社設立時に取り決めるもの

オーストラリアで会社を設立するには、以下の事項について取り決める必要があります。
1. 会社名
2. 会社の住所
3. 取締役(Director)と秘書役(Secretary)
4. 株式・株主
5. 会社の定款

1. 会社名

既に登録されている会社名は使用することができませんので、事前にオーストラリア証券投資委員会(ASIC)のウェブサイトにて登録したい会社名が使用できるかチェックをします。 もし、ビジネスで使いたいと思っている会社名が既に誰かに登録されていたとしても、オーストラリアでは別途ビジネス・ネーム(Business name)を登録することができますので、それをビジネス上の名前として使うことができます。 一つの会社で複数のビジネス・ネームを取得し、事業ごとに異なる名称を取得することもできますので、ビジネス・プランによって使い分けるといいでしょう。

2. 会社の住所

会社の住所は登記上の住所営業用の住所が必要となります。  登記上の住所は政府機関などからの公的書類を受領することのできる住所(会社法142条)となり、営業用の住所はビジネスを実際に営んでいる住所となります。 

この登記上の住所と営業用の住所は同一でも構いませんし、ご自宅を会社の住所としてご利用されても構いません。 EC事業のようなビジネスでしたり、自宅住所を公開したくない方達の中には、都心部の住所を提供してくれるオフィス代行業者(レンタルオフィス)と契約されて住所を借りられる方もいます。 

3. 取締役(Director)と秘書役(Secretary)

オーストラリアで会社を設立するにあたって、最低1名の取締役が必要となり、取締役のうち少なくとも1名はオーストラリア在住*である必要があります。 取締役と秘書役のどちらに就任するにも、18歳以上の個人でなければなりません。 

会社設立時に必要な取締役と秘書役の情報は以下の通りです。
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- 出生都市名

なお、日本のように会社設立時に社判を作成する必要はありません。  オーストラリアでは代表取締役による署名・捺印ではなく、取締役のサインによって手続きを行います。

ちなみに、これは弁護士をしていて、日本人の方に一番よく聞かれる質問になりますが、サインは漢字でもかまいませんが、本人確認が目的ですので、パスポートと同じ物に統一しておくといいでしょう。

4. 株式・株主(Shareholder)

会社設立時に必要な株式・株主の情報は以下の通りです。
- 発行する株式数
- 
1株あたりの金額
- 各株主の氏名
- 各株主の住所
- 各株主の生年月日
- 各株主の出生都市名

会社の資本金は会社設立の申請時に定めることになりますが、上場企業を除き、オーストラリアでは資本金額はあまり重要視されませんので、株式発行総数1株、株式総額1ドルという会社も珍しくありません。 むしろ株式総額を高く設定していると、後日、実際に支払いが計上されていない部分は債権者から株主に対して請求される可能性がでてきます。 資本金は会社に貸し付ける形にして、株式総額は少なくしておいた方が無難でしょう。 

なお、私個人の経験からいえば、1ドルで1株(株式総額1ドル)とするよりも、1ドルで10株(株式総額10ドル)と株式を複数にしておくことをお勧めします。 そうしておけば、将来、事業拡大等に伴い、株式譲渡する時などに役立つ可能性がでてくるからです。 

ちなみに、会社登記機関が資本金の払込を確認することはありませんので、実際に資本金が会社設立時に払い込まれている必要はありません。 実務上は会社が設立されて、会社が銀行口座を開設した後で株主が資本金の金額を会社の銀行口座に入金することが行うのが一般的です。 

5. 会社の定款

オーストラリアでは会社設立時の定款(Constitution)の作成は必須ではありません。 オーストラリアの会社法141条にはReplaceable Rulesという会社の内部管理について定めている規定があり、定款を定めない場合には、これがデフォルトのルールとして会社に適用されます。 ただ、会社の運営形態によっては、独自に定款を定めておいた方が良いことは間違いありません。

会社設立の所要日数と費用

オーストラリアの会社設立にあたっての所要日数ですが、これは必要な情報が整っていれば、オンラインで申請してから15分程で登記が完了します。 また、オーストラリア政府における会社登記費用(2020年8月現在)は506ドルです。 これは日本の会社設立の際の登録免許税のように資本金の額に応じて支払う費用が変わってくるといったことはありません。

なお、ご自身で政府に会社設立の申請を行うこともできますが、通常は専門家に申請手続きを委託します。 というのは、専門業者は手続きに慣れていますし、専用のフォームからオンラインで申請を行いますので、はるかに早く確実にできるからです。 なお、会社設立にあたっての代行手数料は500ドル~1000ドル(+GST)前後掛かる場合が一般的ですが、こちらも依頼者の資本金の額に応じて支払う費用が変わってくるといったことはありません。

会社設立後の手続き

会社を設立したら、会社の納税者番号(Tax File Number)やビジネス番号(Australian Business Number)の登録を行うことが出来るようになります。 また、会社を設立すると登記簿謄本が直ぐに送られてきますので、銀行口座を開設することができるようになります。 

オーストラリアで会社を設立する際に必要な手続きは、以上で一通り完了したことになります。 オーストラリアの会社法は連邦法であり、会社の設立手続はこの会社法に基づいて行われるため、州毎に異なるといったことはありません。 

オーストラリア国内に住所を有していないオーストラリア国内に取締役の適任者がいない、急いで会社を設立して銀行口座が必要等の理由でお困りでしたら、当オフィスで手続きを代行することもできます。 当オフィスでは、オーストラリアでビジネスを展開するにあたってのサポート全般を承っており、会社設立の他にも、弁護士が以下の点についてサポートを行っております。

  • 雇用契約書作成・労務問題
  • リース契約関連
  • ビジネス売買
  • 各種交渉
  • 債権回収
  • 訴訟
  • 顧問契約
  • 取締役業務代行

お困りでしたら、先ずはご相談いただければと思います。 

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