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刑事事件その3:オーストラリアの刑事裁判と弁護士の選び方 

オーストラリアの刑事裁判と弁護士の選び方

 ”刑事事件その1:オーストラリアで逮捕されたら” 及び ”刑事事件その2:オーストラリアで刑事事件に巻き込まれたら゛では逮捕されて起訴されるまでの流れについて説明しましたが、今回は起訴された後の流れについて解説します。

起訴されたらどうなるのか

 日本では基本的に検察のみが被疑者を起訴する権限を有していますので、ちょっと小突いただけの暴行や低額の窃盗など比較的軽微な犯罪であっても原則として警察が覚知した全ての事件について警察から検察に送られ、検察が最終的に起訴するか否かの判断を下すことになります。  他方、オーストラリアでは日本と全く制度が異なり、軽微な犯罪については警察が起訴する権限を有しています。  オーストラリアの警察は逮捕から4時間以内に起訴するかどうかを判断しなければならず、犯罪行為が確認された殆どのケースでは4時間以内に起訴の判断が下されますが、この時間を過ぎたからといって起訴手続が無効になることはありません。  もし警察が起訴した場合、あなたは被告人となり、あなたに対する処罰の決定は裁判所で行われる事になります。  そして、刑事裁判では、裁判官によって有罪か無罪か、及び、有罪になった場合には懲役刑や禁固刑、罰金刑などの刑罰が決められて判決が言い渡されます。

 警察があなたを起訴する場合、どの裁判所にいつ行かなければならないのかが書かれた “Court Attendance Notice” と呼ばれる書類が渡されます。  Court Attendance Noticeの他にも警察から手渡された書類や資料は弁護士との打ち合わせに必要ですので大切に保管して無くさないようにしてください。

逮捕されてから裁判までどれくらい時間がかかる?

 日本では軽微な犯罪で逮捕されてもその後勾留されなかった場合は、起訴されて判決が出されるまでに数ヶ月以上の時間を有することも多いものですが、オーストラリアでは起訴されて判決が出されるまでのタイムスパンがとても短く、1カ月以内に結審する事も珍しくありませんので、逮捕されたら迅速に対応する必要があります。  特に軽微な事件でかつ被告人が罪を認めている事件については1回の裁判期日で裁かれることになり、その場で即日判決が言い渡されるのが特徴です。  

しかしながら、十分な準備をせずに裁判に臨んだり、裁判官の問いに関係ない回答ばかりしていると、「準備してからきなさい」と直ぐに裁判は打ち切られ、裁判が数か月先延ばしになるということもよくあります。  また、被告人と意思疎通が取れていない状態で裁判所が一方的に判決を言い渡すことは出来ませんので、通訳の準備などを含め、事前に準備をしてから裁判に臨まなければなりません  

弁護士に依頼した方がいいの?

これは良く聞かれる質問ですが、間違いなく弁護士に依頼された方が良いでしょう。  刑事事件の被疑者・被告人になった場合、あなたには弁護士に依頼する権利が保障されています。 裁判所では一日に何十件と刑事事件が処理されており、裁判官は被告人が高い水準で裁判に臨む準備ができている前提で話を進めていきますので、審理に関係ない質問や相談に時間を割くことはありません。 また、裁判所の慣習として最初にプライベートの弁護士が付いている被告人から裁判が行われ、その後に国選弁護人が付いている被告人の裁判が数件ずつ纏めて行われ、弁護士が付いていない被告人は一番最後に裁判が行われますので、弁護士を付けなかった場合、予告なしに何時間も待たされることがあります。  指定された時間に裁判所に行ったものの、数時間待った挙句にどのタイミングで入廷すれば良いのか解らず帰ってきた、何が何だか分からない内に裁判が延期になってしまった、といった相談を偶に受けることがありますが、オーストラリアでは経済的に自費で弁護士費用を支払うことができない場合にはLegal Aid(リーガルエイド)という国選弁護人をつけてもらうことができますので、プライベートの弁護士に依頼されない場合はLegal Aidに相談されてください。

 ただ、オーストラリアのLegal Aidは殆どの事件について事前に綿密な打ち合わせをした上で減刑の嘆願をしたり、被害者がいる事件について被害者と示談交渉をしたりという精力的な弁護活動をしてくれるわけではなく、裁判当日に被告人と会って短時間(数分~長くて数十分)の打ち合わせをするだけで裁判に臨むことになります。  その点、自費でプライベートの弁護士に依頼した場合、事前に弁護士と十分な打ち合わせをすることができ、弁護人は事件に至った経緯と犯行理由、被告人のキャラクター、今後社会に危害を及ぼす可能性や再犯の可能性がないこと等を汲み入れた弁護活動を行って減刑を求めることが可能になります。  この弁護活動によって量刑に差が出る可能性は大きく、できる限り量刑を軽くしたいという方は事前にプライベートの弁護士に相談されることをおすすめします。  

 刑事弁護は誰がやっても同じではなく、弁護士次第で結果が変わることも大いにあり得ます。  被疑者や被告人にとって、弁護士選びはまさに人生の明暗を分けるほど重要なことなのです。 

これって前科が付きますか?

 日本では有罪判決を受けると必ず前科がつくことになり、その人が生きている限り、一生前科の記録が保管され続けます。  これはオーストラリアでも同じで、オーストラリアでは裁判官が有罪判決を記録する旨のConviction Recordedの判決が出すことにより Conviction(犯罪者) としての記録が付きます。   この記録は一般に公表されるわけではありませんが、何かあったときには政府や捜査機関に参照されますし、次に何らかの罪を犯した場合には記録が照会されて、より重い罪が適用される事になります。  

この Conviction(犯罪者) の記録が付いてしまいますと、就労や海外渡航(ビザや永住権が降りない)など様々な場面で制約を受けるだけでなく、勤務先の規定によっては過去の犯罪歴を自主的に開示しなければなりませんので、不利益を被る事になります。 万が一会社員の方がConviction Recordedの判決を受けた場合、会社から懲戒解雇処分を受ける可能性もあり、Conviction Recordedの判決となるかどうかはあなたの一生を左右しうる重大な岐路となりえます。 ですから、たとえ軽微と思われる事件で起訴された場合でも、Conviction Recordedの判決を避けるために実力のある弁護人をつけて減刑の嘆願をする意味は大いにあるといえます。

まとめ

 これまでみてきたように、もし万が一オーストラリアで逮捕されてしまったら、異国の地で何が何だか分からないまま有罪判決を受ける前に、まずは弁護士に相談されてみることをおすすめします。  特に帰国日程が迫っているケースで裁判日程が延期されてしまいますと、裁判の為だけに戻ってこなければならなくなったり、場合によっては帰国できなくなるといった最悪の事態も起こりえます。

 刑事弁護は誰がやっても同じではなく、弁護士次第で結果が変わることも大いにあり得ます。  被疑者や被告人にとって、弁護士選びはまさに人生の明暗を分けるほど重要なことなのです。  刑事事件の弁護士費用は一般人にとって決して安い金額ではありませんが、刑事事件をどのように解決したかによって、量刑の軽重や前科がつくかどうかなどその後の社会生活にとても大きな影響を与えることになります。  そのため、弁護士費用が高いか安いかという金銭面を気にするよりも、刑事事件を得意としている、刑事事件の経験が豊富な弁護士を探すことを優先することをお勧めします。  緊急時には当オフィスにご連絡ください。 


以上、3回に亘って、オーストラリアの刑事事件について、私が執筆していたコラム(日豪プレス、リビング・イン・ケアンズ)とブログ上の法律コラムを完成版として再編集させていただきましたが、少しでも皆様の利益と公益に繋がればと思います。 

2019年1月11日
オーストラリア国弁護士・神林佳吾

なお、刑事事件について過去のコラムはこちらをご参照ください。

刑事事件その1: オーストラリアで逮捕されたら
刑事事件その2: オーストラリアで刑事事件に巻き込まれたら
刑事事件その3: オーストラリアの刑事裁判と弁護士の選び方

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