目次
オーストラリアで初の大麻の合法化
つい先日、Australian Capital Territory(“ACT”)の議会において “個人使用の大麻所持” が法案として可決され、2020年1月31日からAustralian Capital Territoryでは個人での使用を目的とした少量の大麻の所持が合法化されることになりました。 これはオーストラリアで初の試みであり、アメリカでは11州、スペインやポルトガルやカナダなどの国に追随する形で大麻を合法化する政策となります。
- この政策によって、ACTでは以下のことが合法化されます。
- 50グラムの乾燥大麻(150グラムの生大麻)の所持
- 個人で2本までの大麻草の栽培(一世帯当たり4株まで)
なぜ合法化するのか
この法案はACT政府の公式見解として発表されているように、違法薬物の使用を容認したり、促進したりするものではなく、大麻が既にオーストラリア社会に広く浸透している現状に対して最小限の法的フレームワークを設定することで粗悪品の流通や乱用などによる被害を最小限に抑えることを目的とした政策であることが明言されています。 オーストラリア政府としては、犯罪組織が独占している大麻のマーケットを適宜摘発していくよりも、大麻を合法化することで犯罪組織による収益を抜本的な部分から断ち切ることを視野に入れています。 現在のマリファナ売買の取引の殆どが違法に行われており、オーストラリア政府はこれらの売り上げに対して本来支払われるべき税金を全く回収できていないのが現状です。 オーストラリア政府Parliamentary Budget Officeの試算に拠れば、大麻の合法化により年間20億ドルの税収を見込むことができ、また、36億ドルの経済効果が見込めるということですから、大麻市場を野放しにするのではなく、大麻を合法化することで積極的に大麻市場を政府の管理下に置くという政策であるようです。
これまでの研究から大麻が与える健康被害はアルコール以下(少量の使用に限る)だとする主張も見受けられますが、どちらも過剰摂取による健康被害が予想されるため、今後も政府による取り締まりの対象であることに変わりはありません。
なぜ、大麻が違法なのかについては、オーストラリアにおける医療用大麻の記事をご覧ください → オーストラリアにおける医療用大麻について
大麻の合法化にあたっての法規制
今回の大麻の合法化はACTにおける大麻市場を合法化するものではなく、既定の処方に基づいた大麻の栽培・使用は処罰されなくなりますが、今まで通り大麻を売る側は処罰の対象になります。 また、18歳未満の未成年による大麻の所持はその量を問わず違法となりますので、大麻の栽培と収穫後の保管にあたっては子供の手の届かないところで行わなければならず、子供の近くで大麻を喫煙することも禁じられる法律が制定されることになっています。
私が住んでいるクィーンズランド州ゴールドコーストでは一年を通して温暖で寒暖差はあまり感じられませんが、キャンベラの冬は気温が0度近くまで下がりますので、その期間は屋外で大麻を栽培・収穫できないでしょうし、そうなると室内での栽培をされる方も出てくることが予想されますが、大麻を栽培するにあたって “子供の手の届かないところ“ が室内の何処を想定しているのか(子供の居ない家庭に限定されるのか)、また、大麻の販売は違法のままということですので、大麻を合法的に栽培するにあたって、その種や苗はどこから入手するのか疑問符が残るところです。
なお、オーストラリアの連邦法で大麻は違法薬物として指定されていますので、今回のACTにおける大麻の合法化に伴い、オーストラリアの検察庁はACTの法案における立場を尊重する旨の見解を公式発表しています。
追記: ACTにおいて合法的に所持することが出来る50グラムという量についてですが、ジョイントと呼ばれる乾燥大麻を巻いたものが1本あたり0.33グラム程度といわれており、クィーンズランド州の場合はマリファナを30グラム以上所持しているとCommercial Quantity(販売所持と見なされる量:すなわち麻薬の売人)とみなされますので、弁護士の視点からしてみると、かなりの量だといえます。 近い将来、オーストラリアの他の州でも同じような動きがあるとは思えないのですが、政策としては非常に画期的だと思います。
この記事へのコメントはありません。