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オーストラリアの不動産売却における注意点

オーストラリアの不動産売却手続きにおける注意点

1. 不動産売買契約書
オーストラリアで不動産売却時に用いられる契約書は州毎に異なるものの、クィーンズランド州ではクィーンズランド州不動産協会(Real Estate Institute of Queensland)認定の住宅売買契約書が一般的に用いられます。  この契約書は100年以上に亘る同協会の蓄積された経験とノウハウが反映されており、様々なケースに対応できるよう包括的な契約内容となっており、カバーされている契約事項は多岐に亘っているのが特徴です。  その他の州もクィーンズランド州と同様で各州の不動産協会が弁護士監修のもと公的に認定された書式を用いるのが一般的です。  これらの契約書が用いられる場合、売主の詳細、買主の詳細、物件の詳細と売却価格などの事項を記入するだけですが、一般的に買主が留意するべき主な契約事項は以下の点が挙げられます。

1.1 クーリング・オフ期間
クィーンズランド州の場合、(オークションでの購入を除き)居住用物件の購入時には法律で5営業日のクーリング・オフ期間が設定されます。  この5営業日は締結された契約書のコピーを買主が受け取った日からカウントされ、クーリング・オフ期間中は、買い主はいかなる理由でも契約を解約することができますが、売り主は購入金額の0.25%の違約金を買い主に請求することができます。  なお、クーリングオフの違約金は預けてあるInitial deposit(最初の手付金)から差し引かれるのが一般的です。  

1.2 建物、害虫の調査
殆どの買主は実際に不動産物件を見た上で購入手続きに進みますが、外観からでは確認することが難しい瑕疵や問題点については、なかなか素人では判断できないものです。  例えば、シロアリが軒下や壁の中に巣をつくっていたり、建材にアスベストが使われていたり、過去に浸水していた形跡があったり、外からみるだけでは判断する事ができない場合も多いものです。  マイホームを購入したものの、購入後に床が抜けてしまったり、屋根が落ちてきたり、そういったリスクは出来る限り避けたいものです。  そこで、買主はライセンスを保持している建築業者により物件の調査を実施してレポートを取得し、レポート内容に納得のいかない場合は契約を解約する権利を設けることができます。  レポートの内容によっては、決済までに売り主が修理する旨を交渉したり、修理の代わりに購入金額から修理費用としていくらか差し引くなど、交渉することも可能ですので、実際の調査と判断に必要となる日数を契約で取り決めておいた方がいいでしょう。

1.3 ローンの取得
ローンを組んで不動産を購入する場合は、銀行側から融資にあたっての承認を得なければならないものですが、このローンの申請から承認までに必要となる日数は金融機関に拠って異なり、審査内容もケースバイケースです。 契約書にサインしてから、購入にあたっての資金が期日までに用意できない場合には手付金が没収されてしまいますので、融資取得期日(Finance Date)までに買い主が納得のいく融資が取得できない場合は契約が解約できるという条項など適切な条件を契約で取り決めておいた方がいいでしょう。

1.4 契約書の作成と特別条項
前述した建物の検査とローンの契約事項については、日数を書き込めるようになっていますので、不動産エージェントが書きこんでくれる場合が一般的です。 その他に良くある契約内容として、買主が住んでいる家を売ると同時に引っ越し先の家を購入を希望する場合には、両方の家の決済が同時に完了することを条件にするなど適切な特約が契約書に含まれている必要があります。   もし一方の契約が何らかの理由で破棄となったり、延期・完了しない場合には住む家がなくなってしまったり、購入金が支払えなくなる可能性がありますので注意が必要です。  

2. 決済(Settlement)
決済とは不動産の購入代金の支払いと権利の譲渡が行われる手続きの事をいいます。  決済日に買主は銀行保証のついた銀行小切手を購入代金として売り主に手渡し、それと同時に、売り主は権利譲渡書を買主に手渡します。  買主と売主が銀行でローンを組んでいる場合は、売主側の抵当権(Mortgage)の解除と買主側の銀行が抵当権の設定手続きに入りますので4者の代理人が集まって手続きを行います。  このプロセスの目的として、売主から買主へ名義の書き換えを行うとともにローンの契約条件で設定されている抵当権について作業を行い、売主がローンを借りていて抵当権が付いていた場合はお金を貸していた金融機関への返済を行った上で抵当権を解除します。 そして買主が新たに金融機関からローンを借りる場合は、その金融機関が担保として物件に抵当権を設定します。 売主の方が不動産を担保にローンを組んでいない場合や買主がローンを組まずに決済を行える場合は4者ではなく、当事者のみで決済を行うことになります。 この手続きが終わった段階で不動産は買主のものとなり、その連絡が売主と買主の弁護士から不動産エージェントに行われ次第、不動産エージェントは家の鍵を買い主に渡し、デポジットを売り主に支払うことができます。

保険について
上記2で不動産は決済後に買主のものになると書きましたが、クィーンズランド州では不動産に関する買主の責務は契約締結後の翌営業日の午後5時から買主側に発生しますので、契約をされたら購入者は直ちに保険に加入されておいた方がいいでしょう。  なお、銀行から融資を受ける場合にはローンの申請時に保険に加入している事が義務付けられている場合が一般的ですから、事前に保険会社と段取りを打ち合わせておくとスムーズです。

4 その他の調査項目について
REIQ指定の標準契約書では、買い主は物件に関するさまざまな調査を実施する権利があります。 例えば、地方役所の記録調査(Rates search)、管理組合(ボディー・コーポレート)の記録調査(アパートなど集合物件の場合)、そして土地税(Land tax)の調査は、売り主に未払いの地方税(Rates)・水道代・管理組合費用・土地税がないかを確認するために行われます。  決済後は、決済日前に発生した費用や税金であったとしても、不動産所有者として買い主が未払金の支払いをする責任があるからです。 不動産に付随する未払金や既に支払ってある費用などについては、決済日に併せて日割り計算で算出して購入代金の調整が行われます。

不動産売却の流れについては、”オーストラリアの不動産売却その1 - 全体の流れ”をご参照ください。

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