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オーストラリアで刑事事件に巻き込まれてしまったら
オーストラリアで逮捕されてしまった場合、あなたは警察の取調べを受けることになりますが、その取調べにおいてどのような対応をとるべきなのか、そして逮捕されたらその後の手続がどうなるのか不安に思われることでしょう。 そこで、今回はオーストラリアにおける警察の取調べに対する対応とその後の手続の流れについて解説します。
逮捕された場合の手続き
警察署に連行されると警察官による所持品検査が行われます。 手荷物やポケットの中身を出すように指示されますが、これらは全てバッグに入れられて後ほど戻ってきますので心配ありません。 また、同性の警察官によって服の上から身体検査が行われる場合がありますが、警察官は所定のルールと法律に従って職務を遂行しているだけであり、これらの手続きはあなたの身の安全を確保する為の措置でもありますので、不必要に抵抗する必要はなく、素直に協力するのがいいでしょう。
この段階の手続の一環として指紋の採取と写真撮影が行われます。 場合によってはDNAサンプルの採取が行われる場合がありますが、DNAサンプルの採取には本人の同意が必要となる場合とならない場合が法律上細かく制定されていますので、これを拒否できるかどうかについては弁護士にアドバイスを求めるのがいいでしょう。
取調べが行われるまで暫く待たされる場合がよくあります。 また、警察官が部屋に鍵を掛ける場合もありますので不安を感じたり、落ち着かなかったりするかもしれませんが、指示があるまで焦らずに待ちましょう。
法的に保障されている権利
前回のコラムで述べた通り、あなたが逮捕された時には弁護士に依頼する権利及び自分が言いたくないことは言わなくてよいという黙秘権(但し、名前と住所などは回答する必要があります)が保障されていますが、実際のところ、取調べが終わらないと身柄を拘留されてしまう事が少なくありません。 弁護士は法律をよく理解しており、あなたが何をするべきなのか、あるいは何をすべきでないのか説明してくれますので、逮捕されてしまった場合は早い段階で弁護士に相談するのが最も賢い選択です。 これは法律であなたに保障された権利なのですから、躊躇せず弁護士に連絡したい旨を警察に伝えましょう。
刑事事件において、殆どの弁護士は実際に会って具体的な対応方針が決まるまでは警察の質問に回答しないようにアドバイスを行います。 なぜなら何の準備もないまま警察の質問に回答すると、回答内容について勘違いがあったり、回答内容を誤解されたりして意図していない方向に話が進んでしまったりする事が容易に起きうるからです。 そして、ここで回答したことが自分の意図しないニュアンスや内容で供述調書にとられてしまうと、場合によっては取り返しが付かなくなることもあります。 そのため、この際に 「答えたくありません」 とはっきり伝えることが肝要ですが、警察もあの手この手で話させようとしますので、質問には答えないという姿勢を貫き続けることが難しいようであれば、「弁護士から質問に答えない様に言われた」と伝えるといいかもしれません。
重要な事ですが、裁判において何が重視されるかは一般の方にはわかりづらく、何気なく行った発言が実は自分にとって不利な内容であったということも往々にしてありますので、何を話していいかわからず不安に思われる方は弁護士に相談するようにしましょう。 また、警察が暴力や心理的な圧迫を加えてあなたに何か発言させた場合は違法な取調べとなりますので、そのような事態に出くわしたら弁護士にすぐ連絡をして毅然と対応しましょう。
逮捕後はすぐ釈放してもらえる?
日本では逮捕されると、その後何日も勾留されて仕事に支障がでることもありますが、オーストラリアでは弁護士による保釈請求が比較的簡単に認められますので、逮捕されてもその後何日も勾留されることはよほど重大な事件でない限りありません。 ただし、警察がすぐに被疑者を釈放するかどうかは取調べの状況によりますので、自分の身に覚えのない事実で逮捕された場合には正しい状況説明を行う事が大切ですし、自分がしてしまったことに間違いがない場合であっても誤解のないよう ”事実関係” を正確に警察に伝える必要があります。
保釈請求が認められて、警察が釈放する際に、あなたが “しなければならないこと” や “してはならないこと” の条件が設定されることがあります。 これらの条件は必ず守る必要があり、守らなかった場合には再逮捕されてしまいます。 特に保釈期間中に逃亡するようなことがあると、もともとの罪状よりも重い罪に問われたり、その後の保釈が認められないなど問題が一層複雑でややこしくなってきます。 いずれの場合も、弁護士に状況を確認して貰い、選択肢を把握した上で話を進めていくのが賢い選択です。
次の記事では、”刑事事件その3:オーストラリアの刑事裁判と弁護士の選び方゛について解説します。