オーストラリアで弁護士をしている中で定期的に相談を受けるのが相続時における遺留分制度に関する事柄です。
相続時における遺留分とは、被相続人(亡くなった人)の遺族や密接な間柄にあった方が請求することの出来る遺産取得分のことをいい、これは遺言の内容に左右されず、オーストラリアではFamily Provision Claimという被相続人の亡き後に請求できる制度のことをいいます。
日本の遺留分制度については分かりやすく解説されているサイトが幾つもありますので、そちらをご参照いただくとして、オーストラリアのFamily Provision Claim制度では日本の遺留分制度と大きく異なり、戸籍上の家族や血縁関係者ということだけで判断されるのではなく、申請者の立場における様々な事情が考慮されて判断されることが挙げられます。 この請求権利は州法に拠って定められており、私が住んでいるゴールドコーストを含むクィーンズランド州の相続法( Succession Act 1981)の場合は41条1項、シドニーを含むニューサウスウェールズ州の相続法( Succession Act 2006) の場合は57条では申請者することのできる人物は以下のように定められています。
- 被相続人の配偶者
- 被相続人のデファクト・パートナー(内縁関係者)
- 被相続人と血縁関係にある子、及び、養子
- 被相続人の元配偶者
- 以下の人物
- 被相続人と同じ世帯にあったもの
- 被相続人の孫
- 被相続人によって扶養されていたもの
オーストラリアのFamily Provision Claimの制度では、申請できる権利を有している方に対して自動的に一定の権利が付与されるわけではなく、以下の事柄を中心にケースバイケースで判断が行われます。
- 被相続人との関係及び、その期間
- 被相続人による遺言の内容及び、生前の意思
- 申請者に対する被相続人の責務及び、その性質
- 申請者の年齢、被相続人との関係、健康状態、経済状況
- 申請者による被相続人に対する貢献度合い
上記の他にも裁判所が適切と考える事情全般が考慮されるため、オーストラリアの遺留分制度では高等裁判所に対して申請を行って個別に主張を行う必要があります。 日本の遺留分制度ではない仕組みですが、オーストラリアのFamily Provision Claimでは継続した居住権の行使が認められており、申請者が相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた場合は終身または一定期間、その建物を無償で使用することができる権利など被相続人の亡き後に相続人の生活を保障するための制度が定められています。 ただし、Family Provision Claimの申請は被相続人が亡くなってから一定期間内に申請を行う必要があり、この期間を過ぎていると申請自体が行えなくなりますので、ご自身に十分な遺産が遺されていないと感じられた場合は直ぐに弁護士と相談されることをお勧めします。
なお、オーストラリアのProbate(プロベート)について詳しく知りたい方は、法律コラム: ”オーストラリアの相続手続~Probate(プロベート)~” でも解説しておりますので、ご参照ください。
また、オーストラリアの相続についてよくある質問Q&Aはこちらをご参照ください。
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