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オーストラリアにおける離婚弁護士への相談のタイミング・選び方

目次

オーストラリアで離婚するにあたって良くあるご相談Q&A

弁護士に相談するタイミング

Q. どのタイミングで弁護士に相談したらいいのでしょうか?弁護士に相談する前にまずは自分で問題の解決にあたった方がいいのでしょうか?
A. 離婚案件では、別れ話を切り出す前の段階で弁護士に相談して準備を行うほうが全体的に見て得をするというケースが殆どです。  大抵、問題を先送りにすることで選択肢は狭まってしまうものですし、その後の人生を大きく左右するであろう取り決めは、各々の状況と選択肢を十分に理解した上で行うべきです。  

私の個人的な意見となりますが、離婚問題は虫歯のようなもので、ある一線を越えてしまったら、一時的に痛みが引くことはあっても、なかなか抜本的な問題は自然に解決しないように思います。  ご自身で問題を解決できるかどうかについては私の判断の及ぶところでは無いのですが、見通しが立たず、選択肢が解らない中で話を進めるのは苦しいものですし、ご自身の権利(養育費や財産分与の相場など含む)を理解していないと取り返しの付かない形で話が進んでしまうこともあります。 財産分与の話し合いは、どの段階で開始されても問題はありませんが、一度話し合いが決裂するとやり直しがきかない場合が多く、また、本来請求できるものを見落としたまま進んでしまったり、問題がややこしくなるケースが多いように思います。  その結果、問題解決にあたって発生する時間や労力などが増えてしまうのであれば、最初から弁護士と打ち合わせておくのが賢い選択です。    

これは非常に大切なことですが、相手との交渉が始まっていない段階から準備を行い対策を練っておけば、交渉開始時点で相手よりも優位に立つことができます。  一旦、相手との交渉を開始してしまいますと、相手も弁護士に相談したり、対策を行ってきますので、圧倒的優位に立つことが難しくなります。  ですから、早い段階で弁護士に相談して準備を行っておくことが、交渉をスムーズに纏めるための近道です。  

書類にサインする時は弁護士に相談すべきか

Q. 相手から英文で書類が届き、これにサインするように言われました。正直、何が書いてあるのか解りませんが署名しても大丈夫ですか?弁護士に相談した方がいいでしょうか?
A. 通常、契約や取り決めというものは、その書面に署名(同意)することで発生する義務と責務を理解した上で行わなければならないものです。  ですから、何が書いてあるのか解らない状態で署名することは賢明ではありません。  弁護士に相談するのが最善ですが、そこまでする必要があるかどうか解らないということでしたら、先ずは英語が得意な友人に相談して翻訳してもらいましょう。  老婆心かもしれませんが、その書類があなたの認識どおりの内容であるという保証はなく、ひょっとしたら全然違う内容の契約書かもしれません。  ですから、受け取った書類を翻訳し、きちんと内容を理解してから署名されることをおすすめします。   

オーストラリアで離婚を取り扱っている弁護士の探し方

Q. 日本からオーストラリアの離婚問題について相談したいのですが、近場にオーストラリアの離婚を取り扱っている弁護士がいません。どうしたらいいですか?
A. 日本では大抵どこの法律事務所でも離婚について取り扱っているイメージがありますが、オーストラリアの家族法は専門性が高く複雑な分野になりますので、離婚問題を多く取り扱っている弁護士とそうでない弁護士の経験値は歴然としています。 私の経験上、法人をメインとする法律事務所では離婚案件を年に数件程度しか取り扱っておらず、簡単な離婚相談は対応できても、離婚訴訟の経験が少ないことから全体的な視野や進め方に選択肢が限られてしまうものです。  分かり易くいえば、内科医と皮膚科医のようなもので、ごく簡単な離婚手続きの依頼でしたら、どの弁護士でも結果は大きく変わることはありませんが、訴訟を見据えていたり、専門性のあるご相談をされたい場合は離婚に専門領域のある弁護士に相談するべきでしょう。  なお、日本への帰国を視野に入れずに離婚される場合は国際離婚というよりも、単純にオーストラリアの法律に基づく離婚ともいえますので、ローカルの弁護士やリーガルエイドなどでも十分に対応が可能です。

最近ではごく普通のことになりましたが、オーストラリアの家族法は連邦法ですので、必ずしも近場の弁護士に相談される必要はありません。  現在は対面よりもZoomミーティングやメールでのやりとりの方が主流ですし、むしろ書類の確認などは、その都度、事務所に来ていただいて目の前で読んでもらうよりも(自分のペースで何度も読み返すことのできる)メールでやりとりした方がスムーズに進みます。  なお、離婚相談はご夫婦の状況を確認するだけでも相応に時間がかかるものですから、初回相談に時間制限を設けていない事務所を選ぶといいでしょう。

Hourly Rate(アワリ―・レート)

Q. 弁護士のHourly Rateって何ですか?
オーストラリアの弁護士に依頼される場合、日本のように着手金と成功報酬という固定費用というシステムではなく、Hourly Rate(アワリ―・レート)と呼ばれる時間単価での請求方式が用いられることが一般的です。 このシステムは一長一短あるものの、初回相談が無料で見積もりが安価であっても、途中で話が二転三転しますと、最初に出してもらっていた見積もりと、最終的な費用が全然違うというのは比較的よく聞く話です。 弁護士がチャージするHourly Rateが高いと長期的に発生する総額が高くなりますので、正式な依頼をする際に弁護士のHourly Rateが幾らなのか確認して比較してみるといいでしょう。  また、日本人の方が窓口となって業務は別の弁護士が対応する場合は費用は費用が二重三重になりますので注意が必要です。

なお、この Hourly Rate は各自が勝手に決められる金額ですので、必ずしも、Hourly Rateが高いからといって必ずしも能力が高いとは限らず、法律事務所の抱えるスタッフ数が多くなるほど高くなる傾向にあります。  私の場合、前の事務所の支部で所長をしていた時は1時間580ドル+GSTを頂いていましたが、2009年に独立したときに(初心を忘れないためにも)費用体型を見直し、自分が弁護士になって1年目の頃のHourly Rateである1時間300ドル+GSTとさせていただいています。 

日本人弁護士に依頼するメリット

Q. 日本語のできる日本人弁護士に相談するメリットは何ですか?
A. 日本人弁護士に依頼するメリットとしては、通訳や翻訳を介さずに十分な意思疎通を行うことができること、そして、日本人にありがちな問題点を把握している点です。 日本人弁護士はオーストラリアの法律だけではなく、業務遂行にあたって必要となる日豪間の法律やシステムの違いを理解していますので、オーストラリア人弁護士では取り扱ったことのない日本人特有の問題でもスムーズに答えが返ってくるはずですし、日本の法律や制度を踏まえたアドバイスも行うことができます。 

オーストラリア人を対象にした離婚手続を多く手掛けてきた弁護士であっても、国際離婚の取り扱いが少なかったり、特に日本人が関連する離婚について取り扱ったことが無い場合には細かい部分の采配が出来なかったり、どうしても時間に比例して費用が高くついてしまうものです。   複雑な事案であればあるほど、弁護士との意思疎通が重要となりますので、意思疎通が重要になることが予想される場合には日本人弁護士に相談されることをおすすめします。  大抵の弁護士はコンサルティング時のアドバイスを書面にて出すことができますので、そららは必ず取得しておきたいところです。 少し時間をおいて、その内容を検討し、よく解らないことは弁護士に確認されてから話を進めていくのが間違いのない進め方です。 

当オフィスのよくある質問Q&Aはこちらをご参照ください。  

 


以上5回に亘って、私が2009年~2017年の間に ”オーストラリアの離婚” について執筆していたコラムとブログ上の法律コラムを再編集しました。  他に離婚後のプロセスや調停についてのコラムも再編集いたしましたので、少しでも皆様の利益とお役に立てればと思います。  

なお、離婚についてのコラムは全9回(現在、5回目のコラム表示中)の掲載となります。全リストは以下をご参照ください。 

1:オーストラリアにおける離婚事情と離婚手続
2:オーストラリアにおける離婚ー何を決めなければならないか
3:オーストラリアの養育費
4:オーストラリアの離婚~インターネット上の情報に惑わされないために~
5:オーストラリアにおける離婚弁護士の選び方
6:オーストラリアで離婚成立後行うべき3つの手続
7:オーストラリアの調停制度(メディエーション)
8:ハーグ条約 - 子供の連れ去りについて
特集記事:  離婚案件のエキスパート、神林弁護士に聞く!  (NEW!!)

オーストラリアの月刊誌・日豪プレス(2018年12月号)において、当オフィスの特集記事「離婚案件のエキスパート、神林弁護士に聞く!」が掲載されました。 (2018年11月27日追記)

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