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遺言書がないと財産が没収される!?
最近は随分と減りましたが、日本人の方から「オーストラリアでは遺言書が無いと財産が政府に没収されるのですか?」という質問を受けることがあります。この質問をいただくことが多かったので、どこから出たうわさなのだろうと聞かれるたびにいつも思っていましたが、相続財産が政府に没収すなわち税金の一部として接収されてしまうケースというのは、基本的には遺言書が存在せず、相続人がいない場合すなわち亡くなられた方に近い親族(配偶者や子供、親や兄弟)が居ないような状況に限られます。
オーストラリアでは、遺言書が無くても被相続人に親族がいる場合は、その親族が相続手続を行うことは認められています。ただ、遺言書が無い場合は相続に際して必要な手続が増えますし、遺族間のトラブルの元になりますので、遺言書を作っておいたほうが良いに越したことはありません。
Letters of Administration~遺産管財人を高等裁判所に申請~
オーストラリア国内に不動産や銀行預金などの資産を遺したまま、被相続人がオーストラリアにおいて有効な遺言を作成されずに亡くなられた状態をIntestate(無遺言)といいます。この場合、亡くなられた方の相続手続にあたって、親族の方が高等裁判所に遺産管財人として認めてもらうための申請として、Letters of Administrationを行う必要があります。
無遺言の相続手続では遺言が存在しているケースのように遺言執行者が指定されていませんので、原則として、Next of Kin(被相続人の親族で一番血縁関係の近い方)が遺産管財人として申請を行うこととなります。
相続財産の分配方法
高等裁判所によって遺産管財人が選任されますと、遺産管財人は相続の分配をSuccession Act 1981に基づいて行わなければなりません。相続における配分は最初に生存配偶者が相続財産のうち15万豪ドルと家財道具(Household Chattel)を取得し、それ以外に遺産がある場合は親族間で分配することになりますが、生存している親族によって分配方式は異なるため計算式は少し複雑です。この場合、予期せぬ人にも相続権が発生したり、デファクト(事実婚)関係の間に生まれた子供が相続人として認められるにあたって裁判が必要となったりと、様々な手続が必要になる可能性があります。
家財道具(Household Chattel)とは、家具、什器類、カーテン、ドレープ、カーペット、リネン等
all furniture, curtains, drapes, carpets, linen, china, glassware, ornaments, domestic appliances and utensils, garden appliances, utensils and effects and other chattels of ordinary household use or decoration, liquors, wines, consumable stores and domestic animals owned by the intestate immediately before the intestate’s death.
“Household chattels” does not include a motor vehicle, boat, aircraft, racing animal, original painting or other original work of art, trophy, clothing, jewellery, or other chattel of a personal nature.
相続財産の分配方法:具体例
①被相続人に両親及び配偶者がいて、子はいないケース
基本的には被相続人の配偶者が遺産をすべて取得することになります。
日本法では被相続人に子がいない場合、被相続人の両親にも相続する権利が発生しますが、オーストラリアでは配偶者がいる場合は被相続人の両親には相続する権利はありません。
②被相続人に配偶者と子供1人が存在するケース
残りの相続財産のうち2分の1を取得します。
③被相続人に配偶者と子供2人が存在するケース
子供が2人以上存在する場合は、配偶者は残りの相続財産のうち3分の1を取得します。
なお、上記の内容はクィーンズランド州の場合となります。 オーストラリア国内でも州によって適用される法律が変わるため、詳しくは弁護士にご相談ください、