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オーストラリアにおける弁護士の仕事内容
弁護士の仕事は法律の専門家として、クライアントの利益を追求するだけでなく、基本的人権を擁護し、社会正義の実現を目指す仕事です。 オーストラリアでは日本の司法書士や行政書士に相当する隣接法律専門職が存在しないため、企業法務や訴訟だけでなく、督促状の作成や損害賠償請求の示談交渉、離婚協議の和解相談から人身事故における保険会社との交渉など多岐に亘る法律の紛争解決に弁護士が対応します。 世間の想像とは異なるかもしれませんが、事務作業の大半は専門事務員であるパラリーガルが行いますのでオーストラリアの弁護士は高度な専門知識と経験が必要となる業務のみを担い、基本的な労働時間は短いのが一般的です。
オーストラリア弁護士としてのキャリア
日本ではソクドク(弁護士として登録してから、即、独立すること)が認められていますが、オーストラリアでは弁護士任命からフルタイムで累計2年間は弁護士事務所に勤務していなければ独立開業は認められていないため、オーストラリアで弁護士として任官して就職すると、全員が最初は「アソシエイト」と呼ばれる ”雇われ弁護士” になります。 新人弁護士は先輩弁護士の下で実務経験を積み、段々と一人で仕事をこなせるようにステップアップしていきます。 このアソシエイトの期間は事務所から回されてきた案件の対応が中心となりますが、一定の給与が保証され、それにイニシアティブとして売り上げの一部がボーナスとして加算されるのが一般的です。 そして、経験を積み、事務所内における実績を積み上げていくと「パートナー」に昇格し、今度は事務所の共同経営者としての報酬が給与に加算されるようになり、マーケティングや人事など、事務所の管理・運営・方向性、方針樹立などの重要事項にも参画するようになります。 この段階までくると、後進の育成なども重要な仕事となり、率先して他のアソシエイトと共同で仕事をしながらノウハウを教えていくことになります。 何事も初めての時は勝手が分からず、手順を調べるだけでも相応に時間がかかるものですから、弁護士業界では新人弁護士が何十時間もかけた仕事を遥かに上回る水準の仕事をベテラン弁護士が数時間でやってのけたりすることが普通にあります。 ですから、制度上は弁護士になって最短で2年で独立はできますが、それは非常に珍しいケースとなります。
弁護士といえどもサラリーマン?
私がアソシエイト(いわゆる”イソ弁”です)として勤務していた時には、事務所の方針、規程、費用形態など、弁護士といえども従業員にかわりはなく、事務所の意向に従わなければなりませんでした。 事務所が回してくれる案件の対応をしているのであれば、それは事務所に付いているクライアントですから事務所の判断に従うのは当然です。 これは組織で働く以上、ある意味仕方がないことですし、サラリーマンでは普通のことです。 でも、日本人クライアントの多くは私を個人的に頼ってきてくれていましたから、事務所の方針で他の弁護士に回した案件が自分の想像通りに進んでいなかったり、クライアントにキチンと説明できていない状況を歯痒く思っていました。
弁護士のやりがい
私にとって、弁護士の仕事における最大の魅力は、自分自身の信念を曲げる必要がなく、自分が正しいと思う事をしてクライアントと社会の役に立ち、常に新しい知識や経験を吸収できる環境に居ながら生計を立てる事ができることだと思います。 その気持ちは独立してから年々強くなり、今では時間的な制約に捉われる事なく、私が携わる案件全てにおいて自分の納得いく水準の仕事が出来るようになった事、そして、何よりも自分がクライアントと共に喜びを分かち合える立場の仕事に就いている、そんな当たり前な事に喜びを見出す事が出来るようになりました。 弁護士とはクライアントにとって信頼できる存在であること、そして、個人的な話で恐縮ですが、私は弁護士の仕事が自分の天職だと思っています。 そういう風に思う事ができるのが、弁護士のやりがいだと思います。