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日本とオーストラリアの調停制度の違い
日本で調停といいますと、通常は裁判所が任命する調停委員などの調停者が当事者双方の間に入って問題の解決を目指すプロセスのことをいいます。 この調停委員として任命される方は人格見識が高く、また社会生活の上で豊富な知識経験を有する者である必要がありますので、年齢は40歳以上70歳未満と法律で定められています。 ですから、調停委員はベテランの弁護士や医師、会計士などの国家資格を有する方がなる場合が多く、時には間違いを指摘したり、人生の先輩としてアドバイスしてくれたり、双方の話を聞きつつ法的基準に基づいて解決合意の成立を目指します。 そして、合意に至った場合は調停調書という公文書が作成されますので、裁判の延長上のようなものが調停であるものと理解されている方が多いと思います。
オーストラリアの調停制度は日本の調停制度とはやや異なります。 オーストラリアには日本でいう調停制度はなく、調停委員もいません。 そして、この制度は日本ではメディエーションと呼ばれています。 民間組織もいくつかありますが、こちらは裁判所認定ではありませんので資格は至って簡単ですし、通常はボランティア活動の一環として行われます。
オーストラリアの調停制度
オーストラリアの調停制度は自主交渉援助型調停(メディエーション)であり、メディエーションでは第三者(メディエーター)が当事者間の自主的な話し合いを援助し、対話を促進することにより、解決に向けた合意の成立を目指します。 言い方を変えますと、オーストラリアの調停制度では具体的なアドバイスや法律の説明は一切行われず、あくまでも、冷静に解決に向けた話し合いを行うため、当事者双方が言い合いにならないように、議題を整理しつつ、公平かつ中間の立場にあるメディエーターが間に入って話し合う手続のことをいいます。 ようは、メディエーターが ”信号” のように話し合いを円滑に進める役割を果たすということになります。 基本的には家族法の紛争の初期段階で用いられる事前制度であり、裁判所が認定する調停制度(メディエーション)は無償で提供されています。 なお、メディエーションでは日本の調停制度のように調停調書が作成されるわけではありませんので、取り決めた示談内容を有効とするためには、双方が弁護士からアドバイスを受けている旨のCertificateを添付する必要があります。
なお、メディエーターは公平かつ中立でなければなりませんので、法律的なアドバイスはできないことにご留意ください。
なお、離婚についてのコラムは全9回(現在、7回目のコラム表示中)の掲載となります。全リストは以下をご参照ください。
1:オーストラリアにおける離婚事情と離婚手続
2:オーストラリアにおける離婚ー何を決めなければならないか
3:オーストラリアの養育費
4:オーストラリアの離婚~インターネット上の情報に惑わされないために~
5:オーストラリアにおける離婚弁護士の選び方
6:オーストラリアで離婚成立後行うべき3つの手続
7:オーストラリアの調停制度(メディエーション)
8:ハーグ条約 - 子供の連れ去りについて
特集記事: 離婚案件のエキスパート、神林弁護士に聞く! (NEW!!)
オーストラリアの月刊誌・日豪プレス(2018年12月号)において、当オフィスの特集記事「離婚案件のエキスパート、神林弁護士に聞く!」が掲載されました。 (2018年11月27日追記)