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弁護士が教える オーストラリアにおける医療用大麻について

目次

はじめに

日本で麻薬というと、覚せい剤やMDMAなどの違法薬物と大麻(マリファナ)を一括りでイメージしてしまう方達が多いものですが、違法に製造される化学薬品である覚せい剤やMDMAなどと異なり、自然の中で種から育てて収穫することができる大麻については、オーストラリアでは昔から比較的寛容なスタンスが取られてきています。  

オーストラリアでは2016年2月にNarcotic Drugs Amendment Act 2016が制定されたことにより、2016年10月から医療用大麻の利用がシステムとして合法化されました。 この改正によって、オーストラリア国内における医療目的と科学的研究目的の医療用大麻の栽培が認められるようになり、医師が必要と診断した場合に限り、患者に医療用大麻の使用が認められるようになりました。 

医療用大麻の合法化により、実際に医療大麻を使用して疾患や難病の方の症状を改善する以外にも、大麻ついての研究が合法なスキームのもとで発展していくことが予想される他、産業として拡大し大きな価値を生み出すなど、様々な付加価値が期待されています。 

なぜ大麻が違法なのか?

大麻の合法化を主張する人達の意見に耳を傾けてみると、【昔から大麻は自然に生えている天然由来のものだから体に大きな害は無い】といったものがあります。 ただ、その論法であれば、その液汁がアヘンになる芥子も天然由来のものといえますし、そもそも “昔から自生している大麻草” と “嗜好品として出回っている品種改良を施された大麻草” はTHCの含有量からも実質的には全くの別物といえますから、オーストラリアでも大麻は違法薬物であることに変わりはありません。  そして、何よりも大麻の流通・販売そのものが違法行為であるため、違法に出回っている大麻については品質管理や品質保証が一切ないという点についても留意する必要があるでしょう。  大麻が違法に販売されている理由の殆どが営利目的であり、経済的な側面からみれば、大麻を売り捌くにあたって相手の健康面を考慮するよりも依存性や効率面を重要視するのは何ら不自然なことではありません。  最悪のケースとして、購入した人が何度もリピートしてくれるよう【危険ドラッグ】のように依存しやすい違法薬物が吹きかけられている可能性も否定できない訳ですから、大麻が取り締まりの対象となっているのは自然なことです。

医療用大麻って具体的にどういうもの?

比較的新しい分野ですので、その効能については、今後の研究で大きく変わることも考えられますが、大麻には鎮痛作用、沈静作用、催眠作用、食欲増進作用、抗癌作用、眼圧の緩和、嘔吐の抑制などの効果があるといわれています。 

現在は主に癌や癲癇、多発性硬化症など慢性的な痛みが伴う症状に処方されるケースがい多ようですが、法律上は特定の病気や症状に限定されているわけではなく、その症状に対して、医療用大麻の使用が適切だと医師が判断すれば、処方されることになります。  

依存性や副作用はないのですか?

私は医療関係者ではありませんし、薬物に関して深い知識がある訳ではないのですが、オーストラリアの医療用大麻というのは “モルヒネ” と同じ方向の位置づけであるように思われます。  

モルヒネというのは癌の末期患者や断続的に続く痛みを緩和する目的で処方されるものですが、モルヒネを利用することにより、痛みが和らぐことは間違いないですし、医師の指示に従っていれば強い依存になる可能性も低いと考えられています。  モルヒネは医師の処方の下で使用量・使用方法が定められており、相応のメリットが期待できますが、その原材料となる芥子の液汁が凝固したものがアヘン、一度使用すると殆どの人が死亡するまで使用を止められない ”廃人” になってしまうヘロインはモルヒネを精製したものですから、あまりにも効能が強すぎるといった側面もあると思います。  

そこでモルヒネに代わる天然由来の鎮静剤として大麻が着目されたのではないかと思われます。  医療用大麻は含有される薬効成分や比率を変えることで特定の疾患を改善しやすくするなど、症状に特化した処方が可能であり、オピオイド系で対処が難しい場合の処方薬として期待されています。  比較的新しい取り組みですから処方量の目安について蓄積された情報があるわけでなく、担当する医師の判断に委ねられますが、安全に安全を期して少量から処方されることになりますので、安全性は高いものと思われます。

医療用大麻をやってみたいです

オーストラリアで医療用大麻を使用する場合は、医師の診断を取得してから、政府に医療用大麻の患者としての登録を行い、ライセンスを発行してもらわなければなりません。 すなわち、オーストラリアで認可されている医療用大麻のシステムは、医師の処方の下で処方される、一定の品質管理が行われた大麻を医療用の目的で使用するシステムのことをいいます。  平たく言えば、オーストラリアにおける医療用大麻は煙草のように火をつけて喫煙することは認められていませんし、ましてや自分で育てることもできません。 あくまでも医療用に抽出された大麻草の薬効成分の抽出物である大麻製剤を使用した治療となり、一般の人が想像するような違法に流通しているバッズ(雌の大麻草における花の芽部分)ではないということです。  医療用大麻としての合成成分を含む錠剤やカプセルなどを服用することで、ひょっとしたら気分がリラックスしたりハイになる事はあるかもしれませんが、それが医療用大麻本来の目的ではありませんので、そのような効果はないかもしれないということです。 

医療用大麻が横流しされる可能性について

オーストラリアの医療用大麻の利用については、最初に医師の診断が必要となり、医師が医療用大麻による治療の必要性があると診断した場合は医療用大麻の患者としての登録を行うことができ、政府からライセンスの発行を受けることになります。 当然ですが、医療用大麻製品は医師の監督下で限られた数量しか処方されませんし、第三者に譲り渡すなどの犯罪行為が発覚した場合には罰金・懲役刑に加えて、ライセンスが剥奪されてしまいますので、違法に横流しをするリスクがメリットを明らかに上回るでしょう。 

また、診断料やライセンスの費用の他に必要となる医療用大麻そのものの価格についても留意する必要があります。  これは患者の状態や使用頻度にもよりますが、1週間あたり50ドル~100ドルほどかかる模様です。  その点、違法に出回っている大麻の元手は非常に安価(家庭菜園の場合は無料)ですから、現状のオーストラリアにおける医療用大麻が営利目的で横流しされる可能性は非常に低いと考えられています。  

まとめ

オーストラリアにおける医療用大麻のシステムは、純粋な医療目的を理由としており、何よりも安全性を重視しているため、世間一般で想像されような違法大麻とは全くの別物といえます。  

 オーストラリアで初めて大麻が合法化された記事はこちら → オーストラリアで初の大麻の合法化

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