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オーストラリアの裁判:裁判書類の送達とSubstituted Service(代替送達)

目次

オーストラリアの裁判:裁判書類の送達

オーストラリアの裁判では、当事者になった相手に申請書・訴状・答弁書などの裁判書類が送られ、その内容について異議申立てを行う機会が与えられます。  例えば、あなたが単独で離婚手続を申請される場合には、その手続に関する申請内容を他方当事者である配偶者に知らせ、その申請内容について相手に異議がある場合には反対の申立てやその理由を記載して裁判所に提出する答弁の機会を与えなければならないということです。 

日本では裁判所が特別送達と書いてある封筒・はがきを郵送してくれますが、オーストラリアの裁判手続では原告や申請者がご自身で手配する必要があり、審理が行われる前までに送達が行われた旨を宣誓供述書で確認して裁判所に提出しなければなりません。 その際に通常の郵送では相手が受け取ったかどうか定かではなく、本当に送ったかどうかも自己申告になりますし、また、相手が受け取っていたとしても、忙しくて「まさか、そんな重要な裁判書類が入っているとは思わなかった」と開封していない場合もあるでしょう。  従って、オーストラリアの裁判における申請書類の送達は専門の業者を介して行うのが一般的であり、裁判書類の送達は公平な第三者による手渡しが原則となります。 (相手に法人の場合、弁護士が代理人としてついている場合は手渡しで送達する必要はありません) 

しかしながら、相手が裁判手続の送達に備えて所在が解らないようにしたり、わざと書類を受け取らないよう妨害をすることも少なくありません。  悪質なケースでは、送達相手本人が目の前に確認出来ているにも関わらず、書類の手渡しを拒むようなこともありますが、その場合は、その時のやりとりを送達人が裁判所に確認することで手渡しが行われたことになります。  裁判書類の送達において重要なポイントは、“いつ” “誰が” “誰に” “何を” “どこで” “どのように” 渡したかとなり、相手の協力が見込めない場合には弁護士に相談して進めるのがいいでしょう。

オーストラリアの裁判:Substituted Service(代替送達)について

Substituted Serviceとは相手方に手渡さなければならない裁判書類があるにも関わらず、相手の居所がわからない場合や相手が失踪したような場合において、裁判所の許可を得て法的に送達したものとする手続のことをいいます。  そのようなケースでは一連の事情を裁判所に説明して、送達が行われたとみなされる手続の代替案を認めてもらわなければなりません。  クィーンズランド州の場合は民事訴訟法であるUniform Civil Procedure Rules 1999 (Qld) のRule 116 において以下のように規定されています。

“If, for any reason, it is impracticable to serve a document in a way required under this Chapter, the Court may make an order substituting another way of serving the document”.
(意訳: 何らかの理由により、本民事訴訟法で規定されている方法で書類を送達することが出来ない場合には、裁判所は他の方式での送達を認めることができる。)

最終的には裁判所の判断となりますが、その基準は状況ごとに異なり、原則として、様々な調査を経た上で “出来る限りの手を尽くした” 状態である必要があります。  裁判所が認める代替案は合理的なものが優先され、もしEメールでやりとりが出来ている場合はEメールに裁判書類を添付書類で送付することが認められる場合もありますし、相手の消息が全く掴めないようなケースでは、公共への告知を行う際に用いられる官報紙への掲載、判明している最後の住所近隣で流通している新聞に告知の掲載を行うことなどが一般的な代替案となります。 このような場合、その他に想定しうる手立てはありませんので、それで送達が行われたとみなされることになるという判断となります。

裁判手続において、相手の所在が解らない場合には相手の身元調査をしなければならなくなったり、それでも相手の所在が判明しない場合には裁判所にSubstituted Service(代替送達)を認めてもらう手続が必要になるなど余計な費用や労力が掛かりますので、裁判手続を行う可能性が少しでも出てきたら、相手の詳細を少しでも多く把握しておかれることをお勧めします。

 

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