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オーストラリアの相続手続~Probate(プロベート)~ 

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オーストラリアの相続手続~Probate(プロベート)とは~

日本の相続手続とは異なり、オーストラリアでは原則としてProbate(プロベート)といわれる裁判所が関与する相続手続を行う必要があります。 Probateとは、裁判所が遺言の有効性の確認やExecutor(遺言執行者)又はAdministrator(遺産管財人)を認定するプロセスのことをいいます。  そして、オーストラリア国内において銀行口座、不動産、株式の名義変更などの相続手続を行う際に必要となるのは “遺産分割協議書” や ”遺言書” ではなく、Probate手続を経て発行される “証書” なのです。  日本ではProbateは ”検認” と訳されていることが多いようですが、日本でいう検認手続は、家庭裁判所に申立てがなされ、相続人に対し遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、検認時点における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続であって、遺言自体の有効・無効を判断する手続ではありません。 そのため、日本の検認手続とオーストラリアのProbate手続は全く異なる手続です。

このProbateは、オーストラリアでは高等裁判所に申請を行います。

オーストラリアの相続手続Q&A

Probate(プロベート)手続は、どうして必要なのですか?

例えば、亡くなられた方がオーストラリアの銀行に預金口座を保有していたとします。  この場合、ご遺族の方は銀行側に事情を説明し、預金残高の引出しと口座の閉設手続を行う必要があるわけですが、銀行側は法律に基づいて以下の証明を要求してきます。

1.口座名義人が亡くなられていること 
2.依頼者が相続手続を代行する権利を有していること 
3.依頼者の身元保証と賠償契約の締結

名義人が本当に亡くなられているのか、遺言書が本物なのか、依頼者が正当な権限に基づき相続手続を行っているのかということについて、民間の機関では判断することが難しいものです。 後になって、銀行側が  “勝手に資産を動かした” として、名義人(実は生存している場合)や他の相続人から訴えられることのないよう裁判所で所定の手続、すなわち、Probateを経て発行される “証書” が必要になるということです。  同様に不動産の名義変更や株式譲渡などを行う際にも “証書” が必要となります。

日本に住んでいる日本人が亡くなった場合でも、オーストラリアのProbate(プロベート)手続は必要ですか?

オーストラリア国内の銀行口座、不動産、株式などの相続手続が必要な場合には、日本に住んでいる日本人が亡くなった場合でも、オーストラリア国内で有効な遺言に基づき、Probate手続が必要となります。 

もし、英国やニュージーランドなど英連邦国でオーストラリアと同様の法体系を有する国でProbate手続を受けている場合でしたら、クィーンズランド州では国外の裁判所による遺言・相続における認定をBritish Probates Act 1898という国際協定に基づいて認知していますので、オーストラリアでも有効なProbate手続を経たということになります。  

しかし、残念ながら、日本とオーストラリア間には遺言・相続における国際協定が結ばれていませんので、仮に日本の家庭裁判所による検認手続を経ていたとしても、オーストラリアでは効力を持ちません。  また、この場合、日本の遺言書はオーストラリアの裁判所によるProbateを経たとしても、無効な遺言書となることがあります。

Probate(プロベート)手続にはどれくらいの時間が掛かりますか?

通常、全ての申請書類が整うまでに3週間から6週間程度、裁判所に申請して承認されて証書が発行されるまでに4週間から7週間程度掛かりますから、最短で進んだと仮定してもProbate手続には2~3カ月程度の時間がかかります。  

ただし、これはオーストラリアに住むオーストラリア人が亡くなった場合の話ですので、日本人の方が日本で亡くなられている場合でしたり、申立人の方が日本在住の場合や日本語の書類は必要とされる書類や翻訳条件も異なり、上記に+1~3か月程度を見ておくといいでしょう。       

日本人が気をつけておいた方が良い点はありますか?

オーストラリアに住むオーストラリア人の遺言のProbate手続には慣れている弁護士であっても、日本人や日本で亡くなられた方の対応をしたことがない場合、依頼から数ヶ月経っても申請にあたっての書類が整わない場合が散見されます。  これは仕方がないことなのですが、オーストラリアと日本では色々とシステムも手続も違いますので、日本在住の方が日本で死亡した場合の手続について扱ったことがなければ手探りで進めるという形になりがちです。 例えば「故人の婚姻証明書を取得して欲しい」と要請しても、そもそも日本にはそのような公式書類(日本では戸籍に記載されるだけです)が無かったりします。  どういった書類が必要で、それらは日本の何処で取得することが出来るのか、どのような書類で代替しうるのか、どのような形で申請が行えるのかといったことについて逐一調査しているとどうしても時間と経費が掛かってしまいます。  オーストラリアの弁護士は掛かった時間で課金するのが一般的となりますので、日本で亡くなられているケースではは、日本側の手続や事情をよく把握している弁護士に相談されることをおすすめします。  

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お手にとる機会がございましたら、ぜひご覧いただけましたら幸いです。 (記事はこちらをクリック)  (2020年3月20日追記)
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