はじめて弁護士へ相談される方にとって、「どの弁護士に依頼すればよいのか」は大きな悩みではないでしょうか。
私自身、これまで数多くのご相談をお受けしてきましたが、「もっと早く相談していれば良かった」「最初の弁護士選びを間違えた」というお話を伺うことも少なくありません。
そこで、オーストラリアで弁護士を選ぶ際に、私自身が重要だと考えているポイントをご紹介します。
弁護士の能力
オーストラリアの弁護士に依頼する場合、調べ物や書類作成などに時間が掛かれば掛かるほど、クライアントが負担する費用は高くなります。そのため、弁護士の経験や実績、特に実務能力の高さは、とても重要な判断材料になります。
簡単な内容の依頼であれば、どの弁護士に依頼しても大きな差が出ないこともあります。しかし、話が複雑になったり、裁判に発展したりした場合には、最後まで一貫して対応できる弁護士でなければ困ります。
そのため、オーストラリアで弁護士に依頼する際には、学歴だけではなく、ロースクールを卒業した後にどのような法律事務所で経験を積み、どのようなキャリアを歩んできたのかを確認することが大切です。
通常は、法律事務所のホームページで学歴や経歴に加え、専門分野や取扱業務、これまでの実務経験などを確認したうえで、初回相談を通じて弁護士の能力や人柄、仕事への取り組み方について、ある程度の感触をつかむことができると思います。
実際に担当する弁護士
日本語の通じる弁護士は、英語を母国語としない日本人の方にとって、とても頼もしい存在です。
一方で、最初は日本人の弁護士が相談に乗ってくれたものの、実際に依頼した後は、日本人の弁護士が窓口となり、オーストラリア人の弁護士が主に業務を行うケースもあります。
さらに注意したいのは、その日本人弁護士が退職や異動などにより担当を外れてしまうケースです。
その場合、依頼者は突然、日本語で相談できる相手を失い、面識のないオーストラリア人の弁護士が担当となることもあります。
日本語で安心して相談できることを理由にその法律事務所へ依頼したにもかかわらず、その前提が途中で変わってしまうことは、依頼者にとって大きな負担になりかねません。
そのため、特に規模の大きな法律事務所へ依頼する際には、実際に誰が業務を担当し、最後まで責任を持って対応してくれるのかを事前に確認しておくことをおすすめします。
なお、私の事務所では、初回相談から案件終了まで、私自身が責任をもって一貫して対応しております。途中で担当者が変わることはありませんので、その点は安心してご相談いただけます。
弁護士業務以外の経歴
世の中には、ロータリークラブ、商工会議所、青年会議所など、さまざまな団体があります。これらの団体にはそれぞれ存在意義があり、人脈を広げるうえで役立つこともあります。
また、本業以外の経歴や役職を積極的にアピールされる方もいます。
しかし、そうした団体での活動歴や役職は、弁護士としての実務能力とは必ずしも関係ありません。会合やセミナーなどで人脈を広げることはできますが、その分、本業に使える時間が減ることもあります。
大切なのは、弁護士としてどのような実務経験を積み、どのような仕事をしてきたのかという点です。
広告や肩書き、所属団体の多さだけで判断するのではなく、弁護士としての実務経験や、実際の仕事への姿勢を見ることが大切だと思います。
本当のことを言ってくれる弁護士
弁護士も依頼があってこその仕事ですから、依頼者の方にとって耳の痛いことをあえて言わない弁護士もいます。
しかし、私は、依頼者の方にとって不利な点や弱点も、きちんと指摘してくれる弁護士こそ、本当に信頼できる弁護士だと考えています。
長い付き合いのある弁護士であれば、互いに気心も知れ、信頼関係も築かれているものです。しかし、初めて相談する弁護士の場合、甘い見通しだけを伝えて依頼を受けようとするケースもないとはいえません。
特に無料相談では、限られた時間の中で十分な説明や確認ができないこともあります。その結果、後になって「言った、言わない」の問題になることもあります。
初回相談で十分な時間を取ることができれば、細かい事情まで説明したうえで、弁護士から具体的なアドバイスを受けることができます。また、分からないことをその場で確認することもできます。
必要であれば、重要なアドバイスについては書面化してもらうことも検討すべきです。そのような依頼に快く応じてくれる弁護士は、誠実に仕事をしている弁護士である可能性が高いと思います。
仕事や対応のスピード
どの職種にも共通することだと思いますが、仕事を溜めない人は、総じて生産性が高いものです。
依頼を受けてから、ある程度内容を整理する時間は必要ですが、早い段階で対応すれば記憶も正確ですし、気になる点や確認が必要な点があっても、効率よく話を進めることができます。
一方で、依頼を受けてから時間が経ってしまうと、内容を思い出すのに時間が掛かり、重要なポイントを取りこぼす可能性も出てきます。その段階で確認が必要な事項が出てきても、時間が経ってからではクライアントに確認しにくくなり、仕事の精度にも影響が生じるおそれがあります。
あれもやりながら、これもやるという状況は、どうしてもミスを生みやすくなります。仕事を溜めることに、良いことはほとんどありません。
そのため、弁護士の仕事に対する姿勢、取り組み方、対応のスピードは、とても大切な判断材料になります。少しでも違和感を覚えた場合には、その弁護士がどのような仕事の進め方をする人なのか、よく見極めることをおすすめします。
若手弁護士とベテラン弁護士、どちらがおすすめか? 広告掲載の見分け方について
弁護士にとって、場数を踏んでいるという経験は、かけがえのない財産です。
何事も最初は手探りになりますが、経験を積むことで、精度の高い仕事を短い時間で行えるようになります。若手弁護士が長い時間を掛けても十分に対応できない仕事を、経験豊富な弁護士であれば短時間で的確に処理できることが少なくありません。
もっとも、単純に年齢だけで判断することはできません。
若く見えても、実は弁護士として十分な経験を積んでいる方もいます。一方で、年齢が上であっても、弁護士登録後の実務経験がそれほど長くない方もいます。
大切なのは、年齢ではなく、弁護士としてどのような経験を積んできたのかという点です。十分な実務経験を積まないまま独立している弁護士もいますので、細かい学歴や経歴がきちんと掲載されているかを確認してみるとよいでしょう。
また、最近はソーシャルメディアやウェブ広告を通じて、弁護士が積極的に情報発信をすることも珍しくありません。LINEや直通電話を公開したり、各種ウェブサイトにレビューを掲載したりする弁護士もいます。
もちろん、広告や情報発信そのものが悪いわけではありません。しかし、広告への積極性と、弁護士としての実務能力は必ずしも一致するものではありません。
広告や口コミだけで判断するのではなく、その弁護士の経歴、実務経験、仕事への姿勢を総合的に見て判断することが大切です。
Hourly Rate(アワリーレート)
オーストラリアの弁護士に依頼する場合、日本のような着手金と成功報酬という固定費用のシステムではなく、Hourly Rate(アワリーレート)と呼ばれる時間単価での請求方式が用いられることが一般的です。
このシステムには一長一短があります。初回相談が無料で、最初の見積もりが安価に見えたとしても、途中で話が二転三転すれば、最初の見積もりと最終的な費用が大きく異なることもあります。
弁護士のアワリーレートが高ければ、長期的に発生する費用の総額も高くなりやすいため、正式に依頼する際には、その弁護士のアワリーレートがいくらなのかを確認しておくことが大切です。
もっとも、アワリーレートは各弁護士や法律事務所がそれぞれ決めるものです。そのため、アワリーレートが高いからといって、必ずしもその弁護士の能力が高いとは限りません。また、スタッフ数の多い法律事務所ほど、事務所運営に掛かるコストが高くなり、アワリーレートも高くなる傾向があります。
私自身、勤務弁護士時代には、Hope Islandオフィスの所長として、1時間580ドル+GSTのアワリーレートで業務を行っていました。
その後、2009年に独立してからは、「初心を忘れない」という思いから、弁護士登録1年目当時と同じ1時間300ドル+GSTというアワリーレートを約17年間にわたって維持してまいりました。
現在は、近年の物価上昇や業務体制の見直し、また一件一件のご依頼に十分な時間を確保する必要性を踏まえ、1時間450ドル+GSTのアワリーレートでご依頼をお受けしております。
最後に
弁護士費用は決して安いものではありません。だからこそ、単純な時間単価だけではなく、その時間でどれだけ質の高い仕事ができるかという点も、弁護士選びでは大切なポイントになります。
弁護士とのお付き合いは、短ければ数日、長ければ数年に及ぶこともあります。費用だけではなく、「この人なら安心して任せられる」と思える弁護士を選ぶことが、何よりも大切だと私は考えています。
このページが、皆様にとって後悔のない弁護士選びの一助となれば幸いです。
